鴫

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平成24年3月号より
代表近詠
松納
井上信子
花八ツ手佛間一と間をかくしたる
その椅子に夫が揺れをり冬苺
ふたたびは無し雑炊を吹き合ふは
夕暮を待つや一人の松納
まだ匂ひある輪飾りを下ろすなり
初旅の夕空泌みるばかりにて
冬蝶のまさか港のレンガ街
越年の音のさまざま港町
ナフキンに太箸寝かすとき静か
利き腕のまだ利く年を送りつつ
当月集より

荒れし昨夜も夢のやうなる樹氷光
中江月鈴子
水仙の蕾に迷ひなかりけり
山ア靖子
折れ折れて枯蓮は剛通しをり
橋道子
山茶花の下はさざんかばかりかな
中村恭子
したしげに柚の寄りくる柚湯かな
荒井和昭
夕かげりして忖度の膝毛布
風間史子
落葉踏む落葉と紛ふ靴の色
田村園子
ざわざわと来て冬座敷覗きけり
小林正史
冬晴や河岸段丘遠くあり
田令子
雨しとど「希望」といふ名の冬薔薇
加藤峰子
ぶつ切りの大根静かに煮え上がる
前川明子
眠る山寝息聞こゆるところまで
相良牧人
石蕗黄なり正座するかに古屋敷
荒木 甫
ロボットのやうな眼の街師走
石田きよし
水仙の蕾の中に希望あり
田原陽子
冬麗の七階の景見せたしよ
数長藤代
蓮の骨析れて重なる吾が影も
中山皓雪
しぐるるや舟形も無くすみだ川
折橋綾子
一葉忌むらさき帯ぶる日のひかり
椿 和枝
自然薯の無疵横たへ覇者たりし
佐藤山人
鴨寄り来金の目なほも尖らせて
原田達夫
名園の安堵の色に蓮の骨
笠井敦子
悴みてロザリオを売る漢かな
山本無蓋

寒麦集より

鰤起し朝市手話となりにけり
甕 秀麿
馬のりに越ゆる倒木冬日漏れ
成田美代
冬日浴ぶ夫の髭剃り一時間
中下澄江
三姉妹よく食べ笑ひ返り花
松澤美惠子
唇を噛んで竹馬出陣す
平野みち代
白鳥のみな踏ん張りて着水す
和田紀夫
口笛のやうに鳴きけり都鳥
箕輪カオル
煤逃げを観音様に告白す
濱上こういち
飴色の土鍋一つの冬籠
宇都宮敦子
ヒッチコックめき冬の雁来るぞ来るぞ
村 卯

羽音抄

山眠る桶屋は戸口開け放ち
青木ちづる
小気味よくとぢる蝦蟇口十二月
箕輪カオル
午後の日を積む白菜の尻を積み
成田美代
助手席にサンタを乗せてゆくところ
田令子
乾鮭のかほひしひしと鳴りにけり
遠山みち子
日向ぼこ入会金はお日様に
中山皓雪
灯点してダンス教室煤払ふ
平野みち代
前世に色忘れ来し花八つ手
荒木 甫
干し柿の狭間に傾ぐ裏筑波
原田達夫
ポインセチア心なきこと敢へて言ふ
山本無蓋
冬麗の上野の森にマハのゐて
藤沢秀永
障子閉め心の扉ひらきけり
藤兼静子
ぺットボトル挿して畑の冬囲ひ
山本久江
大嚏己鞭打つごとくにも
中島芳郎
燈台の照らす限りの冬の雨
宇都宮敦子
瞑目し大災害の年逝かす
笠井敦子
晩秋の寝釈迦の雲の動きけり
青山正生
焼売を小走りに買ふ冬小旅
田中涼平
重なりてすき間ありけり蓮の骨
大場ましら
文化の日ごとりごとりとパン焼ける
奥井あき


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