鴫

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平成24年1月号より
代表近詠
磯鴫よ
井上信子
葛の雨銚子小浜といふ辺り
浜芝を踏む千代尼忌を過ぎてをり
露草や背負ふかたちに礁並び
磯鴫よ今朝香と水欠いて来し
薬湯を随意に召せや萩の庭
濤声へ寺門ひらかれ鬼芒
刑部岬野分立ちたる色の中
秋茄子にこだま返しのやうな色
後年の為の書を置く蘭の花
橋上にしてよろめきぬ後の月
両国をよぎりたるより月の客
神の名を読みては月を招くなり
当月集より

剥きたての浅蜊勤労感謝の日
中江月鈴子
秋空へ真紅の手帳携へむ
山ア靖子
県境は川の中央鳥渡る
橋道子
かほどまで柿の鈴生り病む姉に
中村恭子
鹿島北浦藷を掘るあけ鳥
荒井和昭
足元も遠くも草の絮日和
風間史子
砧打つ音かと枕そばだつる
田村園子
芒野の大雑把なる案内図
小林正史
万祝や鰯の煮付甘辛し
田令子
虫の音や青き闇なる停車駅
加藤峰子
寄ばれ来し心地や秋の子規の庵
前川明子
心音の一拍欠くる鉦叩
相良牧人
蛇穴に入る寸前の奢りかな
田原陽子
またひとつ最優秀賞九月尽
数長藤代
妙義秋色とりことなつてゐる手足
中山皓雪
空低くひそと菊月始まりぬ
折橋綾子
刈田道ブルーシートの屋根残る
木下もと子
稲架組むを昔語りに老いはせず
椿 和枝
穂紫蘇摘む喰道楽の為せるわざ
佐藤山人
街に満つ佐原囃子や草の絮
原田達夫
鵙高音庭師に三時の用意する
笠井敦子
秋刀魚焼く師系白潮午次郎
山本無蓋
絶筆となりし花野の短歌集
石田きよし
ゆるやかに佐原ばやしや新酒酌む
荒木 甫

寒麦集より

荒海を見据ゑて能登の稲架襖
山口ひろよ
冬瓜もらふ胸の辺からむねのへん
齋藤厚子
秋霖や峡に鎮もるワイナリー
藤沢秀永
水鏡せり敗荷の裏おもて
宇都宮敦子
桃の香のあふるる仏間日曜日
柴田歌子
衣被余生の顔の揃ひけり
大場ましら
末枯を渡る風なら真向かひに
成田美代
山霧や湧き出づごとく人現るる
来海雅子
松虫の遊ぶ仲間を呼ぶやうに
足立良雄
思慕告ぐる手話のはにかみ鰯雲
濱上こういち

羽音抄

生ぐさきまで岩なめらかや紅葉川
成田美代
ロッカーの百円戻る黄落期
相良牧人
稲の香や夕さり夜さり雨戸打つ
中山皓雪
産卵の蜻蛉に水面硬からむ
宇都宮敦子
菊日和初めて母に抱かれし日
平野みち代
色鳥や人を囲へる観察舎
森田尚宏
咲くまでは小筆のやうな曼珠沙華
箕輪カオル
縄文の紫としてあけびの実
山本無蓋
長江に因む吾の名や星飛べり
山本久江
螇蚸とぶジョギングの列ものかはと
藤沢秀永
子がその子背負ひて走る運動会
坂場章子
秋野菜行商列車日に一本
宮ア根
町並はふるさとに似て祭笛
来海雅子
一心不乱とはけらつつきのこと
笠井敦子
萩刈つてほろほろ二人老いゆくよ
矢田 涼
新米にセシウムなどのあるまじく
椿 和枝
やや寒のくちすすぎゐる山泊
村上すみ子
六人の椅子に吾のみ花茗荷
森 さち子
笛の音をからめて届く木犀香
大場ましら
池澄めり老鯉立ちて息を吸ふ
山内洋光


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