バックナンバー（鴫誌より）
平成23年12月号より
代表近詠
寒麦集より
羽音抄
われからや
井上信子
真帆片帆白こそよけれ敬老日
浜下駄のむかし淋しめ渡り鳥
浅茅生や遊び疲れの子が使ひ
父に教はる野球のルール菊日和
秋風や裂きたる魚を紙に置き
あらかじめ真葛ヶ原の雪崩るる日
われからやその後幾度も失語症
一幹にのみ秋蝉の搏ち来たる
蔓茘枝あけぼの色の地に触るる
少少の勝ち気の生まれ蒸し藷
アセロラと言ふはむづかし虫の夜
秋翳や一郭残る煉瓦塀
当月集より浜下駄のむかし淋しめ渡り鳥
浅茅生や遊び疲れの子が使ひ
父に教はる野球のルール菊日和
秋風や裂きたる魚を紙に置き
あらかじめ真葛ヶ原の雪崩るる日
われからやその後幾度も失語症
一幹にのみ秋蝉の搏ち来たる
蔓茘枝あけぼの色の地に触るる
少少の勝ち気の生まれ蒸し藷
アセロラと言ふはむづかし虫の夜
秋翳や一郭残る煉瓦塀
新参と思ふ小鳥の来たりけり
中江月鈴子
芋の露さながら三十三回忌
山﨑靖子
萩叢に風の細かくなりにけり
髙橋道子
朝はビュッフェ麺麭に卵に青葡萄
中村恭子
ここからは崖ぞひになる曼珠沙華
荒井和昭
重陽や少し傷みて本戻る
風間史子
指に圧す二百十日の盆の窪
田村園子
蝉落ちてブラスバンドの遠のけり
小林正史
草々の影を色濃く良夜かな
髙田令子
人形の顔の凹凸銀河濃し
加藤峰子
膝に肘置いて桃むく母米寿
前川明子
洋上に二つのつむじ厄日来る
相良牧人
喪に集ふ晩夏の駅の片隅に
田原陽子
乗り換へて直ぐの邂逅豊の秋
数長藤代
みちのくの広き穂波や心の穂
中山皓雪
繃帯を巻かれし欅厄日過ぐ
折橋綾子
死者の夢ばかり現る夜長かな
木下もと子
女教師ら水撒き継げり運動会
椿 和枝
曲り屋は現の証據のよき乾し場
佐藤山人
凛として母新月に旅立ちぬ
原田達夫
朝顔に新しき朝来てゐたり
笠井敦子
天高し朝日をあびる新タワー
山本無蓋
手の内の落蝉終の鼓動かな
石田きよし
秋天やかつて比翼の尼寺僧寺
荒木 甫
寒麦集より
踏むまいぞ秋蝶の羽の地の歩み
成田美代
一人だけ降りるバス停猫じやらし
和田紀夫
干されたる魚網のしづくねこじやらし
平野みち代
栗飯や屋号で通す母の郷
甕 秀麿
秋色のよく見ゆ眼鏡買ひに行く
濱上こういち
人声のせぬ父の村威銃
山口ひろよ
嚼みやすき厚さに梨を供しけり
坂場章子
残暑見舞旧仮名一字まぎれけり
来海雅子
十五夜に供へし団子いびつなり
堀岡せつこ
数珠玉のやはらかなりし畦の道
岩本紀子
羽音抄
大声に秋の金魚を呼ばふ父
坂場章子
秋の服風を一枚余計に着
濱上こういち
月燦々と傷心の自然治癒
山口ひろよ
膝小憎みんな違つて体育の日
三木千代
秋思てふ光の中につゝまるる
遠山みち子
鮑海女見えて沈んで夫婦舟
平野みち代
木々渡るなじみの風の秋湿り
石田きよし
ドロップの一つに薄荷小鳥くる
宇都宮敦子
草の露一乾坤を風に堪ふ
荒木 甫
子供等の駆けてゆく先鰯雲
髙田令子
放浪の果ての姿のいぼむしり
齋藤厚子
無花果の数をかぞへる雨宿り
猪爪皆子
バーディーの十八番は西日なか
安井和恵
俄か農婦にはか八月大名ぞ
山本久江
何気なく止まることも鰯雲
箕輪カオル
五十年を経るも異郷ぞ草の花
藤沢秀永
敗者想へば朝顔の濃むらさき
田部井幸枝
秋夕焼中途はんぱな己染む
藤兼静子
放射能検査済み票付きぶだう
五十嵐紀子
新涼の朝は鯨の夢を見て
林 弥樹
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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