鴫

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平成23年9月号より
代表近詠
かなかなや
井上信子
川止の報せがトップニュースにて
戦中のサイレン長かりし八月
麦飯や何度も聞きしことながら
蚊遣香律気な渦でありにけり
甘酒の神田明神下の店
見て眞似て水貝のすすり方
留守宅用お控といふ冷奴
お隣りは御隠居の部屋夏の蝶
夕日だけ届く中庭天瓜粉
かなかなや崩れぬほどに本を積む
当月集より

あつさりと引き悔残る百日紅
中江月鈴子
逢ふための母校の坂よ花樗
山ア靖子
あぢさゐに初めの色をつける風
橋道子
敦公はいまふるさとの一挽歌
中村恭子
伽をしてまなぶた重し栗の花
荒井和昭
夕涼の独りに具だくさんの汁
風間史子
金魚草雨気を孕みてさやぐかな
田村園子
初蝉の一声にしていとをかし
小林正史
雨音の変はる境目五月尽
田令子
潜水の鵜の嘴闇をつまみ出す
加藤峰子
母の日の宅急使へ託しをり
倉持梨恵
麦秋のをちこち鳥の交響詩
前川明子
石ひとつ置きて植田の水加減
相良牧人
萬緑の渓へ構図の決まりけり
田原陽子
肩パットすべてはづせり更衣
数長藤代
まだ青春夏の書展の墨を磨る
中山皓雪
梅雨晴間脇目ふりふり文出しに
折橋綾子
薬効に暗示をかくる梅雨晴間
木下もと子
梅雨満月おおきく上げて大漁節
椿 和枝
山小屋のとつとき馳走干蝮
佐藤山人
花樗虜囚になってしまひけり
原田達夫
霊園の森を統べりしほととぎす
笠井敦子
青梅の産毛に雨の粒宿り
山本無蓋
噴水の天辺にある瞬の影
石田きよし
昼の蚊の胡散臭くて古本屋
荒木 甫

寒麦集より

水の国から緑の国となる植田
濱上こういち
宿ゆかた翼広げるやうに着る
大場ましら
糸底を手に馴染ませて新茶かな
宇都宮敦子
開け放ちある方丈や蓮浮葉
村上すみ子
田の水の匂ひ広がる花慈姑
猪爪皆子
記念碑を声たて読めり額の花
成田美代
蚕豆や胎児のやうに眠りゐる
山内洋光
針槐こぼれ螺鈿のれんが路
村 卯
まつすぐに駅舎に帰る親燕
天野正子
草若葉婚の話の膨らめり
柴田歌子

羽音抄

岸洋子聴く短夜のユーチューブ
平野みち代
海酸漿鳴らす夢見る嬰の口
来海雅子
夏の雲有無を言はさぬ象の糞
相良牧人
百合活けて県警本部手話倶楽部
海老根武夫
甘酒の底の微温さをゆらし飲む
宇都宮敦子
柔らかな雨得て加速夏つばめ
藤沢秀永
荒息の井戸のポンプや椎の花
中山皓雪
葉桜の影の飛白の続く道
宮ア根
籐椅子の我と向き合ふ一面鏡
猪爪皆子
干梅の天地を反す箸さばき
山本無蓋
黒猫のパンチを躱す夏つばめ
山本久江
夫へ取り出せり死蔵のアロハシャツ
坂場章子
山の上ホテル間近き橡の花
森田尚宏
栃木まで旅して来ます梅雨晴間
飯島風花
百合の香やエレベーターの隅に椅子
成田美代
まくなぎに再発行のパスかざす
久米なるを
とり囲み一人静を驚かす
三木千代
更衣車掌の声の水色に
西村将昭
切株の北アルプスの端居かな
足立良雄
にごり鮒今日も怯える余震あり
早田路香


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