鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成23年7月号より
代表近詠
ふるさとは
井上信子
ふるさとは祭過ぎたる水流れ
早逝の友の来てをり柚子の花
若者にぺんぺん草と教へしが
かすてらやただ夏風邪と言ひて置く
麦茶煮てをりお隣りのその隣
行きも帰りもおとなりの花ざくろ
夕暮れのまこと六月らしく来る
夏月のすみずみに降るしらしらと
十薬の白花をこそ夏はじめ
十薬の花の遍満たるを踏む
当月集より

若葉冷え村一軒のそば処
中江月鈴子
花冷や無事といふ声ふところに
山ア靖子
この国の震へふるへて紅椿
橋道子
一つ一つ躓いてゐる蜷の道
中村恭子
みくまりをいくつ眼下に鴨帰る
荒井和昭
雀隠れのひだまりを一人じめ
風間史子
戦きの眼の先の紅椿
田村園子
侮りしものに余震と春の蝿
小林正史
楠落葉踏み休日に出勤す
田令子
花冷の災害苦情受く任務
加藤峰子
初ざくら異国の花嫁の手紙
倉持梨恵
震災を知るや知らずや鳥帰る
前川明子
さくらさくら国も山河も破れけり
相良牧人
こころして瑞穂の国の春の水
田原陽子
面映ゆく鴫四月号読み返す
数長藤代
平和呼ぶ太郎の塔や花ぐもり
中山皓雪
空眞青万愚節だとふとおもふ
折橋綾子
液状化あとの白砂辛夷咲く
木下もと子
新入生ありて登校コース変ふ
椿 和枝
すかんぽや村と融和の団地族
佐藤山人
日にゆがむ流れの皺と蜷の道
原田達夫
帰る鳥瓦礫の町を通り過ぐ
笠井敦子
黙祷に始まる句会花吹雪
山本無蓋
深更の警報メール冴返る
石田きよし
年月を畳紙の羽織花蘇紡
荒木 甫

寒麦集より

糸遊へ真直ぐ合はす方位針
成田美代
少年の春の川へとホームラン
村 卯
花曇ちよつと重たき車椅子
中下澄江
被災地ヘ一枚妣の春コート
安井和恵
内のもの全てを透かし干鰈
三木千代
蘖や干支の廻りし六順目
大場ましら
草萌の前方後円古墳群
和田紀夫
末黒野の残りし青と生るるあを
甕 秀麿
初鰹店は西□裏通り
堀岡せつこ
春眠や真面目にさがすうつぼの目
松澤美惠子

羽音抄

花筏海を鎮めに行くところ
相良牧人
海遠く両手に包む和布汁
田令子
瑕瑾なき空は望めず紫木蓮
中山皓雪
打ち返す紙風船の無抵抗
山口ひろよ
朧夜の魚より融ける絵蝋燭
宇都宮敦子
分度器と定規ひよつこり葱坊主
箕輪カオル
さりげなく買ふ被災地の春野菜
木下もと子
しやぼん玉背押すやうに放ちやる
甕 秀麿
幟旗死語に等しきメーデー歌
笠井敦子
あはあはと榛の花咲くあたりかな
森山尚宏
原発記事たたむ閑かな桜の夜
村上すみ子
一万の杉苗植ゑし湿し酒
佐藤山人
文に聞く帰雁の声とおぼしくて
藤兼静子
背の痩せて決断はやき春セーター
数長藤代
表札に総員の名や鳥帰る
五十嵐紀子
箸先に捌く扁平蒸し鰈
青木ちづる
春の子の不思議やみんな駆けてゐる
飯島風花
子猫ゐて僅かばかりの募金かな
橋信一
源泉て何と見合はす新社員
佐藤サツ
巣燕にエンゲル係数なかりけり
柴田歌子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved