代表近詠
背を押す
加藤峰子
凍晴や声が背を押す草試合
息かけて温める児の手雪もよひ
遙かなる帆影の動く冬夕焼
生くるものあるや落葉の深き池
駐車場の太き鎖や街凍てり
ベレー帽の酔うて寡黙や寒四郎
待春や寸暇の卓のマグカップ
絨毯や遊ぶ寝ころぶ本を読む
ヴィヴァルディ聞きつつ大根千切りに
大黒天載せたる竜の賀状くる
名誉代表近詠
二章目
橋道子
名を書くに渾身の夫祝箸
年酒の酔ひ醒ましたる地震の報
遊ぶこと知らざりし母切山椒
北窓を開く晩節の二章目も
春の雪霏々や夫に翁眉
夜のぶらんこ黒澤明生きつづく
叔母といふ柔らかな距離春コート
当月集より
寒麦集より
羽音抄