バックナンバー（鴫誌より）
令和６年１月号より
代表近詠
寒麦集より
羽音抄
始まる
加藤峰子
敗荷に音の始まる乾きかな
石庭の目立ての渦や小鳥来る
哀れ蚊を寄せ小肥りの日蓮像
小物縫ふ一坪店や木の実降る
小野川の綺羅より明くる秋祭
動きしか泥のやうなる鵙の贄
虫すだく闇のあちこちさはさはす
「天晴」の墨書の勢ひ秋日和
銀河への希望の旅券失効す
秋土用喫煙室の無言の徒
名誉代表近詠
石庭の目立ての渦や小鳥来る
哀れ蚊を寄せ小肥りの日蓮像
小物縫ふ一坪店や木の実降る
小野川の綺羅より明くる秋祭
動きしか泥のやうなる鵙の贄
虫すだく闇のあちこちさはさはす
「天晴」の墨書の勢ひ秋日和
銀河への希望の旅券失効す
秋土用喫煙室の無言の徒
長考
髙橋道子
待宵の明りに洗ふ牛乳箱
新調の眼鏡にいよよ月大き
月光やしまひ忘れし花鋏
伐り詰めし沙羅の木に秋逝くばかり
あたたかき十一月は掃除月
玩具選るための長考毛糸帽
鴨一家まことしやかに滑りゆく
当月集より新調の眼鏡にいよよ月大き
月光やしまひ忘れし花鋏
伐り詰めし沙羅の木に秋逝くばかり
あたたかき十一月は掃除月
玩具選るための長考毛糸帽
鴨一家まことしやかに滑りゆく
遠ひぐらし和してけさの観音経
山﨑靖子
分けへだて無く日の暮るる梅擬
荒井和昭
手捻りの鶴頸に挿す吾亦紅
田村園子
天高しあれあればこそ六甲おろし
荒木 甫
骨格のしかと少女の盆踊
石田きよし
数珠玉や地図を頼りの分岐点
成田美代
伝令の覆ふ口元天高し
山口ひろよ
コスモスや長い戦後が揺れてゐる
中山皓雪
野路の空やさしくなりて秋あかね
箕輪カオル
吐息とも古木の洞の秋の声
平野みち代
虫時雨つるむ嬌声ありぬべし
甕 秀麿
いなびかり伊耶那美命の窟仰ぎ見る
宇都宮敦子
伐採のクレーン伸びる台風過
坂場章子
色変へぬ松にしたがふ水の音
和田紀夫
雲の白きはだちてをり良夜かな
鎌田光恵
木漏日に紛れてしまひ秋の色
原田達夫
豊かなる弔問の刻白桔梗
松林依子
秋うららリュック一つの街歩き
山内洋光
秋燕や流鉄小さき切符箱
奥井あき
見晴らしの良き畦道や曼珠沙華
三木千代
一番星の出る頃しぼむ白むくげ
笠井敦子
産地に惚れ身内のやうな栗を買ふ
田部井幸枝
寒麦集より
ドア越しの優しいノック菊日和
川瀨 康
冠雪の富士を標に鳥渡る
渥美一志
袖口のマジックテープ草しらみ
足立良雄
赤ん坊背より剝がす星月夜
五十嵐紀子
赤とんぼ明日は何とかなるものさ
島田喜郎
見上げゐし坂登り切る九月尽
小宮智美
風だけを拾ふ補聴器草紅葉
近澤きよみ
片付けし机そのまま秋の夜
森しげる
羽音抄
東京にアンテナショップ丹波栗
足立良雄
瓔珞に紛ふばかりや柿すだれ
宮﨑髙根
どくどくと醬油缶ごと芋煮会
西村将昭
兵のごとコキア整然秋日和
石田きよし
種採つて朝日ころがすたなごころ
鎌田光恵
遊具みなインクルーシブ赤とんぼ
和田紀夫
茸採り大まかに指すあのあたり
奥井あき
木犀に声を寄せつつ雨宿り
箕輪カオル
背後からビンゴの声や天高し
成田美代
ふと我が名夫が呼びしか秋の風
山内洋光
垣の郁子人に見られて熟れてゆく
島田喜郎
秋天を突くやポプラの並木道
安井和恵
角ごとに満月の位置ありにけり
土門なの子
蒼満月今宵は猫も吠えさうな
山本とう子
最終バス逃がし駅まで星月夜
八尋みなみ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved