代表近詠
遊び心
加藤峰子
すつぽんの長き頸寄る青時雨
危ふさの野暮で大きな花芭蕉
五月雨や名石にある裏おもて
手庇をはみ出す初夏のスカイツリー
卯の花の遊び心を紐に結ふ
花菖蒲水の濁りも滋養とし
大き手の絹莢がばと摑み呉れ
帯鈴の音や運ばるる鰻膳
若竹の早や打ち合うて競ふなり
薔薇の名はダヴィンチ青く燃えてをり
名誉代表近詠
日雷
橋道子
色どりの薬いくつぶ走り梅雨
ぶつかつて弾けて雨のあめんぼう
牛乳瓶の形いつより柿若葉
日雷パリ描きし絵の壁に古る
瓜揉むや込み上ぐといふ胸抱へ
帰省子の覗くいつもの菓子の棚
大西日落ちゆく海の深さかな
当月集より
寒麦集より
羽音抄