鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和5年5月号より
代表近詠
すれ違ふ
加藤峰子
スライド書棚立春とすれ違ふ
受験子と手の交はれば静電気
水琴窟地上の春へと踊る音
大岩の窪に賽銭梅二月
薄氷をノックす赤き鯉の鰭
風紋は吐く息の皺春はやち
魚跳んで河口波立つ春日和
あちらの世透ける格子戸春遅々と
ガス灯の四面に映る春の雲
蕎麦屋へと即決春の途中下車
名誉代表近詠
朧めく
橋道子
春雷のとどめの一打地より湧く
ほんたうの網棚のころ春の山
初蝶の黄の一点の横つ飛び
自転車に乗れたよ記念さくら餅
物足りぬ遊具となりぬぶらんこも
この家の雨戸の癖も朧めく
はんぶんは死者との対話花菜風
当月集より

草一本はなさず抱へ薄氷
山ア靖子
塵取の壊れてしまふ春の雪
荒井和昭
いつもの道なのに遠いよ冴ゆる月
田村園子
ざわざわと菌生るかに霜柱
荒木 甫
身勝手な大陸気団冴返る
石田きよし
春風に歩幅のゆるむ雑木山
成田美代
白障子すかして名前呼ばれけり
山口ひろよ
布子着て百歳まではページ繰る
中山皓雪
裃はパステルカラー年男
箕輪カオル
寒明けや心ほどけてゆく心地
平野みち代
滝凍つる水の拗ねたるところより
甕 秀麿
焙烙があり昔鬼打豆炒りて
宇都宮敦子
挨拶のつい大声に空つ風
坂場章子
水脈やさし水搔き忙し春の鴨
和田紀夫
雲早く水面のかげる梅三分
鎌田光恵
寒紅梅木々の狭間のあの辺り
原田達夫
竹笊に洗ふ米粒日脚伸ぶ
松林依子
豆撒くや先づは吾身の子鬼から
山内洋光
発心のひたすら寵る牡丹の芽
奥井あき
恋ひ翔びとなりて鴛鴦池の端
三木千代
オルゴール不意に鳴り出す雛納め
笠井敦子
観る人のこころに灯る梅一輪
田部井幸枝

寒麦集より

ふるさとはなもしなもしの春の風
宮川智子
鰰のぶりこすすれる齢かな
土門なの子
そよかぜとないしよのはなしいとやなぎ
木澤惠司
牡丹の芽たとへば不動明王の眼
尾川美保子
あめつちの暦となりぬ蕗の薹
渥美一志
消火器の廊下の隅にある余寒
立花光夫
鵯の声掠れて寒の明けにけり
山本久江
訥々と戦後の話浅蜊売
宮ア根
寒き夜の肉じやがのじやがとろけぎみ
島田喜郎

羽音抄

古コート力釦の頼り甲斐
西村とうじ
草青む外からも拭く硝子窓
野口和子
春の興給油満タンまでの音
土門なの子
本堂より法螺貝の音春立てり
箕輪カオル
海苔粗朶の活字のごとく並びをり
小山たまき
合格の受験生待つ胴上げ陣
尾川美保子
にはたづみ桂馬飛びせり寒鴉
平野みち代
背丸め漁網繕ふ四温晴
西村将昭
寒月や心音響くナース室
渥美一志
真上ばかりに返事してをり犬ふぐり
甕 秀麿
百までの未来予想図寒椿
秋元政子
跳箱の聳ゆる記憶寒稽古
川P 康
「人間に注意」と熊へ告知板
西嶋久美子
春浅し戦闘服めくプラタナス
勝山 信
立春の歩道に鬼の逃げし跡
山本とう子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved