代表近詠
すれ違ふ
加藤峰子
スライド書棚立春とすれ違ふ
受験子と手の交はれば静電気
水琴窟地上の春へと踊る音
大岩の窪に賽銭梅二月
薄氷をノックす赤き鯉の鰭
風紋は吐く息の皺春はやち
魚跳んで河口波立つ春日和
あちらの世透ける格子戸春遅々と
ガス灯の四面に映る春の雲
蕎麦屋へと即決春の途中下車
名誉代表近詠
朧めく
橋道子
春雷のとどめの一打地より湧く
ほんたうの網棚のころ春の山
初蝶の黄の一点の横つ飛び
自転車に乗れたよ記念さくら餅
物足りぬ遊具となりぬぶらんこも
この家の雨戸の癖も朧めく
はんぶんは死者との対話花菜風
当月集より
寒麦集より
羽音抄