代表近詠
陶器市
加藤峰子
地球より反り身の態に冬月食
銀杏の実落つ踏まぬやう触れぬやう
穭田に大地の気泡浮かびくる
短日を歩く浮力の満ちるまで
商ひに訛小春の陶器市
小流れに無患子拾ふ寺の晴
明日また使ふ声なり花八手
海老天の尾のさくら色走り蕎麦
えいと引く小春の防災発電機
冬晴やいいえとレ点接種票
名誉代表近詠
はるか
橋道子
冬暖の風をよろこぶ鳥も樹も
冬耕のあとの律儀な土のいろ
実南天どの一粒も雨滴提げ
ソーセージ焼いて泣かする寒厨
箱二つつなげば電車毛糸帽
鬱屈を解く妙薬煤払ひ
風狂も無頼もはるか竈猫
当月集より
寒麦集より
羽音抄