鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和4年10月号より
代表近詠
あかり窓
加藤峰子
赤べこの頷いてゐる熱帯夜
万緑に向ける揺り椅子母の昼
梅雨あがる夜はあめ色の掘削土
麻帽子被れば詩人町会長
止り木に静かな笑顔ソーダ水
代はるがはる緑蔭の猫撫でて過ぐ
戻り梅雨博物館のあかり窓
心太突出し器より潮の香
預かり子日の盛りより引き戻す
爪ほどの西瓜白寿を潤せり
名誉代表近詠
螢籠
橋道子
くろぐろと光飲み込む夏の森
粛と乗るさみだれ月の手術台
八重葎いちばん古い住所録
羅の胸ポケットのルーペかな
嘘のなき夫荒使ふハンカチーフ
八月の記憶は海へなだれこむ
化けて出るほどは愛せず螢籠
当月集より

梅雨明けの起伏たのもし川堤
山ア靖子
大仰な名は祇園守槿かな
荒井和昭
跳ねながら艶の失せゆく蜥蜴の尾
田村園子
矢車草夜の明けゆく薄紫
田令子
茄子潰やいまはかの世のはなしなど
荒木 甫
通院や梅雨の明けたる無縁坂
石田きよし
滝壺の底に始まる水十色
成田美代
羽抜鶏振り向きざまに無頼の眼
山口ひろよ
オカリナのやうな雲から稲光
中山皓雪
かたつむり二泊三日の飼育箱
箕輪カオル
籐寝椅子父の凹みに綻びて
平野みち代
鬼灯より赤きマニキュアして売子
甕 秀麿
梅雨の雷金堂に置く赤バケツ
宇都宮敦子
息潜めをれば翡翠へ連写音
坂場章子
未だうまく飛べぬ子つばめ遠巻きに
和田紀夫
蛍見の橋の名仮名で彫られあり
鎌田光恵
朝焼けや九尺幅の窓に立つ
原田達夫
黒門市場ぬけて文楽夏公演
松林依子
夏燕地にすれすれの風を呼ぶ
山内洋光
形代の吾が名を風の来てめくる
奥井あき
夏足袋の弟子一号と励みけり
数長藤代
長物となりし一つに藺座布団
笠井敦子
打水の名残りの庭へ起き抜けに
田部井幸枝

寒麦集より

代打者の素振りつづける片かげり
足立良雄
黴生ふや大事な物と言ふ芥
土門なの子
切りもなく泡生まれ来るラムネ玉
森しげる
老鶯のひと息の声谺せり
尾川美保子
病院の窓辺七夕竹さやぐ
加藤東風
朝顔市団十郎の名に惹かれ
五十嵐紀子
蜘蛛の囲の仕上がりてをり朝の月
みたにきみ
寝過ごして遅刻の夢に昼寝覚む
島田喜郎
古書店の重き匂ひの夕立かな
宮ア根
茅の輪くぐる作法のとほり乳母車
宮川智子

羽音抄

冷奴ますます素なる人とゐて
山内洋光
髪洗ふ詩嚢のつぼを探るべく
坂場章子
麦藁帽子未来透かして見たことも
田令子
朦朦と早瀬のしぶき花胡桃
山口ひろよ
濡れたくて蹴散らしたくて水遊び
尾川美保子
天井の器具換へ工事汗みどろ
西村とうじ
紅色の生まれ出る迄紫蘇揉めり
みたにきみ
少年の小指の撥ぬる祭笛
平野みち代
人生の早さに流るる夏の雲
三木千代
水断ちてまた水満たす青田かな
甕秀麿
大の字と小の字のあり大昼寝
宮ア根
年ごとの鎖骨の尖り沙羅の花
重廣ゆきこ
大漁が我が家に届く初鰹
島田喜郎
画用紙をはみ出すほどの大花火
山本とう子
肉を喰む明日の暑さに挑むため
近澤きよみ


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved