代表近詠
雨余のひかり
加藤峰子
花菖蒲水を豊かに濁らせて
いきいきと雨余のひかりや四十雀
ヘリコプター擦過してゆく今年竹
帰宅児の梅雨をもち込むランドセル
カフェラテに鳥描く汗の息止めて
猫の舌ぴたぴた夏をまるめ飲む
大げさに鎧うて団子虫の夏
早起きの鎌の湿り柄草を刈る
若葉光むすめへ譲る恋衣
好きな枇杷差入れできず面会す
名誉代表近詠
余命
橋道子
風にまで色を映して濃あぢさゐ
梅雨雲を割るや日輪プラチナに
花南天こぼれて母の忌を籠る
寸劇のやうに拾はれ夏帽子
ふいの客めつきり減りぬ金魚玉
リセットの我身の軽し蔦青し
余命とは誰にもひとつ雲の峰
当月集より
寒麦集より
羽音抄