代表近詠
紐美しき
加藤峰子
紐美しき駅弁ふたつ買初に
初空へ徐々に高鳴る巫女の鈴
木洩れ日や風折れに咲く野水仙
背伸びして鳶に手を振る冬日和
ポインセチア魔除けの色に咲き続く
冬鴉に秩序あるらし夜さりの樹
胴ぶるひせる大根を厚切りに
冬萌や車に古書を売る漢
春の野にコピーのごとく土竜塚
寒き夜のもの言ふ風呂に浸りけり
名誉代表近詠
とうたらり
橋道子
常緑の力いやます寒の入り
三つ星や身に晩年の好奇心
庖丁を斜めななめに削ぐ鮪
雪搔くに勇んで夫老いにけり
ブックカバー紺をかくれば春立ちぬ
とうたらり煙の色に山笑ふ
ありなしの抱負魚氷に上るころ
当月集より
寒麦集より
羽音抄