鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和4年4月号より
代表近詠
紐美しき
加藤峰子
紐美しき駅弁ふたつ買初に
初空へ徐々に高鳴る巫女の鈴
木洩れ日や風折れに咲く野水仙
背伸びして鳶に手を振る冬日和
ポインセチア魔除けの色に咲き続く
冬鴉に秩序あるらし夜さりの樹
胴ぶるひせる大根を厚切りに
冬萌や車に古書を売る漢
春の野にコピーのごとく土竜塚
寒き夜のもの言ふ風呂に浸りけり
名誉代表近詠
とうたらり
橋道子
常緑の力いやます寒の入り
三つ星や身に晩年の好奇心
庖丁を斜めななめに削ぐ鮪
雪搔くに勇んで夫老いにけり
ブックカバー紺をかくれば春立ちぬ
とうたらり煙の色に山笑ふ
ありなしの抱負魚氷に上るころ
当月集より

初詣村の鎮守の列なして
山ア靖子
寒菊のひと叢こする地べたかな
荒井和昭
冬麗の病院バスを独り占め
田村園子
離陸機の軌跡伸びゆく初御空
田令子
着ぶくれてどう切り出すか初対面
相良牧人
読初はその晩年の師の句集
荒木 甫
初雪の積むや望郷しきりなる
石田きよし
山毛欅の木の雪積む瘤も鉈跡も
成田美代
一日の窓に始まる冬青空
山口ひろよ
歩かねば冬ざれの野に呑まれさう
中山皓雪
竹筒に絵彫りこまやか冬灯
箕輪カオル
遠汽笛聞こゆる真夜やレノンの忌
平野みち代
蛇行して己確かむ冬の川
甕 秀麿
白茶けし大地もろとも麦を踏む
宇都宮敦子
日向ぼこ父の足爪切りしこと
坂場章子
陸上げの船の舳の松飾
和田紀夫
冬帝の白龍しぶく岬かな
鎌田光恵
冬雀こぼれるやうに日溜りに
原田達夫
追羽根や昭和の音の遠くなり
松林依子
勇ましく虎のはみ出る賀状かな
山内洋光
流木に蒸して餅つく蜑の家
奥井あき
新玉のファックス念のためと言ふ
数長藤代
シクラメンの鉢を回して品定め
笠井敦子
いつもの声いつもいい声雪合戦
田部井幸枝

寒麦集より

芳ばしき布団に顎を乗せ運ぶ
川瀬康
手順書に書きたす朱書初仕事
西村とうじ
出し雑魚のくつつきしまま雑煮餅
足立良雄
ストーヴの薪の語り果ても無し
森しげる
朝刊の届く道なり雪を搔く
宮ア根
人去りて広き卓なる三日かな
尾川美保子
身の錆や茎漬白粛するはめに
島田喜郎
知らぬ子の庭に来てをり雪遊び
五十嵐紀子
一人居の気儘暮らしの初湯かな
中下澄江
裸木となりて山々筒抜けに
伍島繁

羽音抄

鰭酒に断酒の決めの揺らぎかな
西村とうじ
コンサートの音符まみれのコート着て
奥井あき
春立てり塗りたて匂ふアーチ橋
みたにきみ
崩れてもくづれ落ちても雪達磨
五十嵐紀子
竹林の節目にやどる淑気かな
加藤東風
石段を踏み外しさう梅早し
箕輪カオル
雪晴の竪穴住居からけぶり
鎌田光恵
待春の貝のかたちのマドレーヌ
平野みち代
ひと列車遅らせ湖の鳰とゐる
石田きよし
なくもなし晩年の夢柚子湯かな
松林依子
踏み台に幾度も上がる年用意
尾川美保子
農道をピザ屋が走る女正月
宇都宮敦子
舞ふ雪は我を少女に戻しけり
近澤清美
床の間の虎かつと吼ゆ具足餅
柴田歌子
毛糸編む膝に木の影鳥の影
土門なの子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved