代表近詠
葱の歓喜
加藤峰子
冬晴や古民家カフェの黒き梁
扁額の「道」の道のり冬ざるる
落葉搔く余情はいつも袋詰め
銀杏もみぢ乳根の丈を揶揄し合ふ
手水舎に光る鳥よけ冬日和
ひとつ片付け葱の歓喜を刻みけり
鼻伸ばし花ひひらぎの香へ寄りぬ
百歳へ二年の母よもみぢ晴
テニス女子練習前の落葉かき
倦むたびに眺むモネの絵冬ざるる
名誉代表近詠
裸木
橋道子
さなきだに逢ひたきものを荻の風
根は石と化す大銀杏散りやまず
煤払ひ待つや仁王の衣の皺
十二月捨てず買はずはつまらなし
転がれるだけころがりて毛糸玉
午後五時の冬の灯淡し保育園
裸木の枝無碍にして妙にして
当月集より
寒麦集より
羽音抄