鴫

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令和4年2月号より
代表近詠
葱の歓喜
加藤峰子
冬晴や古民家カフェの黒き梁
扁額の「道」の道のり冬ざるる
落葉搔く余情はいつも袋詰め
銀杏もみぢ乳根の丈を揶揄し合ふ
手水舎に光る鳥よけ冬日和
ひとつ片付け葱の歓喜を刻みけり
鼻伸ばし花ひひらぎの香へ寄りぬ
百歳へ二年の母よもみぢ晴
テニス女子練習前の落葉かき
倦むたびに眺むモネの絵冬ざるる
名誉代表近詠
裸木
橋道子
さなきだに逢ひたきものを荻の風
根は石と化す大銀杏散りやまず
煤払ひ待つや仁王の衣の皺
十二月捨てず買はずはつまらなし
転がれるだけころがりて毛糸玉
午後五時の冬の灯淡し保育園
裸木の枝無碍にして妙にして
当月集より

成るやうになつて鴫みち菊日和
山ア靖子
すみひとの絶ゆる山茶花咲きつのる
荒井和昭
のど飴の効き目確かや障子貼る
田村園子
全山紅葉次のインターチェンジまで
田令子
二刀流まさかと思ふ子規忌かな
相良牧人
無患子の五ついづれも不愛想
荒木 甫
白鳥の永遠なる白に自信満つ
石田きよし
地震あとの戻る虫の音なほ澄めり
成田美代
やつればむ萩の盛りの夕の雨
山口ひろよ
父母の田を削ぎとつて行く雁渡し
中山皓雪
手賀沼の風に身を置く蕎麦の花
箕輪カオル
厄介なものてにをはと草虱
平野みち代
文化の日茶渋おとしてゐたりけり
甕 秀麿
山神の触れたるところ薄紅葉
宇都宮敦子
銀漢やめぐり逢ひたる奇跡あり
山本無蓋
寄り合うて言葉解るる小鳥来る
坂場章子
さらさらと時の流るる秋日和
和田紀夫
穂芒や波しろじろと削る崖
鎌田光恵
草の絮しぐさそれぞれ漂流す
原田達夫
大熊手築地居酒屋小商ひ
松林依子
掛け違ふいつもの釦冬隣
数長藤代
さつぱりとし過ぎるほどに松手入
笠井敦子
燥ぐ子と桜紅葉の七彩と
田部井幸枝

寒麦集より

古酒新酒我が青春にコークハイ
木澤惠司
ボンド死すM列4のシート冷ゆ
奥井あき
水切りに適した小石コート脱ぐ
川瀬康
冬鴉しゆるりと風をひと舐めす
山内洋光
のつけから食べぬつもりの烏瓜
伍島繁
横のもの縱にするのみ冬ごもり
宮ア根
ときめきも妬心も消えて秋刀魚焼く
渥美一志
冬林檎寂しき時は丸かじり
江波戸ねね
マンションの百余の灯火花八つ手
足立良雄
使ふこと稀な出刃研ぐ師走かな
立花光夫

羽音抄

冬の田の底に眠れる力あり
森しげる
煮大根ごぼりごぼりと湯の笑ふ
山内洋光
パレットの如き落葉の吹き溜まり
川瀬康
冬霧にめり込んで船帰り来し
鎌田光恵
佳きことをつとめて想ふ夜長かな
松林依子
一言を会釈に添へて石蕗の花
坂場章子
一葉忌くづるるやうな和綴ぢ本
奥井あき
偕老の家事分担や文化の日
安井和恵
律儀さを背の傾ぎに落葉搔
橋信一
川幅に水押す水や冬に入る
山本久江
雲ひとつ取り残さるる冬はじめ
田令子
秋深しLPレコード手放す日
尾川美保子
小春日の顔に馴染まぬ野良着かな
足立良雄
流したき事あまた在り冬の川
山本とう子
富士を見る来歴の碑や冬木立
鈴木征四


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