鴫

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令和3年6月号より
代表近詠
明日
橋道子
一鞭の春の雷より稿起こす
なほざりの城山ふくれ花の雲
少し散りさくら十二分とぞおもふ
昃れば揺れ重くなる春の水
息切らし来て山門に会ふ黄蝶
誰も避くる涙石なる春の水
火急の用あるか烏の巣の騒ぎ
咲きつめて皓皓つづく胡蝶蘭
コロナ禍の春や酔生夢死は嫌
明日からの計立てなほす春の星
当月集より

指呼の辺に青鷺の佇つ西行忌
山ア靖子
公魚や夕日満帆漁舟
荒井和昭
林道を突つ切る雉の胸の反り
田村園子
鳥帰る空は薄青退職日
田令子
ホップステップ河津桜の天涯に
加藤峰子
満腔のビニールハウス春の息
相良牧人
佐保姫の雨戸に手掛けうづくまる
荒木 甫
囀の止まぬ一樹の暮れのこる
石田きよし
点描の芽吹の山へ踏み入らむ
成田美代
参拝は鰻重の後梅の寺
山口ひろよ
青き踏む足の加齢を脱ぎて踏む
中山皓雪
すし桶の白木の香り雛の宴
箕輪カオル
船笛の余韻あまねし鳥帰る
平野みち代
鉛筆を削れば木の香春待つ子
甕 秀麿
樺一本足して華やぐ春暖炉
宇都宮敦子
空襲と津波の記憶三月来
山本無蓋
耕人は今朝犬連れで会ひし人
坂場章子
畑打の鍬刃に当たる土器の片
和田紀夫
風乗せてふらここの旅雲ひとつ
鎌田光恵
隣街なれど異な街亀の鳴く
原田達夫
春江の風に洗はるやつちや場跡
松林依子
ひと恋し今朝もほんのり春の紅
田原陽子
離れ住む子の助手席に風ひかる
数長藤代
囀りのこぼるる中の土いぢり
笠井敦子
朝を咲く身の丈ニセンチの薺
田部井幸枝

寒麦集より

あなうれし和魂目覚ます初桜
藤沢秀永
ぽつと出の我が生涯や残る鴨
中嶋芳郎
春雷や矢倉囲ひへ端歩突く
西村とうじ
根つからの注射嫌ひや蝌蚪の紐
立花光夫
白梅やフラッシュバックの母の顔
西嶋久美子
色褪せてよりの貫禄内裏雛
三木千代
眼福やあやに解かれて蝶生まる
五十嵐紀子
この店のこの草餅のこの餡子
森しげる
悠然と国道過る孕み猫
塙 貞子
三月十一日乾電池買ふ
宮ア根

羽音抄

花あしび日差しさめゆく午後の風
箕輪カオル
さしも草ささやかに地を覆ひけり
原田達夫
おぼろ夜の病臥のひとは本の虫
松林依子
いささかの孤独弥生の玉子焼き
加藤峰子
割烹着の母逃げまくる鬼は外
濱上こういち
回遊魚のやうな散歩や水温む
齊藤哲子
海面の綺羅ちぎれけり春ならひ
鎌田光恵
見つめられ見つめ返せり雛の眼
成田美代
点滴の猫の神妙春ともし
坂場章子
団地てふ四角四面や咲く桜
荒木 甫
凍て解けの道月面を歩むごと
平野みち代
永き日の二度目も合はぬパスワード
山口ひろよ
連翹をよろしくとのみ転居せり
藤沢秀永
空青し越後の布の雪ざらし
安井和恵
始業ベルたんぽぽ囲む工員に
奥井あき
春の海描けば近き水平線
伍島 繁
白蝶の煌めくあたり君の店
川瀬 康
母遠し二枚あはせで焙る海苔
橋洋子
木の芽吹く授かりし二子子の子二子
蒲野哲雄
永き日を感じながらの長電話
木村百合子


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