Shigi-haikukai
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令和3年5月号より
代表近詠
ささらめく
橋道子
季を分くる嵐となりぬ蜜柑山
春ならひ水面に網目つくりけり
不惑の子幼となりぬ春の夢
春暁の仕込みはじまるパン工房
はじめから気の合ふ人の春ショール
ヒヤシンス曲るわたしの背骨ほど
春一番帽子かぶれば若くなる
亀の鳴く良妻らしく付き添へば
今生とおもふ花束春の燭
山笑ふささらめく川ふところに
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当月集より
大寒やこころの窓も換気せな
山ア靖子
星かがる海女の鉢巻大栄螺
荒井和昭
半眼に臆測を聞く日向ぼこ
田村園子
受験生静かに乗せてバス曲がる
田令子
日溜りの椅子ぱちぱちと梅ひらく
加藤峰子
濠の水忘れ難くて残る鴨
相良牧人
生牡蠣をすすり弁証法的唯物論
荒木 甫
牡丹雪の笑みていざなふ旅ごころ
石田きよし
二三回跳ね浅春の野へ一歩
成田美代
春聯の戸に自転車を凭せ掛け
山口ひろよ
列島のゆるぐ寒波や禍の三波
中山皓雪
亀鳴けりかつて生簀のドッグラン
箕輪カオル
野火の尾を叩く少年頬染めて
平野みち代
踏み行くは軍靴に非ず霜柱
甕 秀麿
冬青草裾濃に古墳囲みたる
宇都宮敦子
薄氷溶け始めゐる猫の皿
山本無蓋
一羽来て一羽が飛んで寒雀
坂場章子
呼吸音だけの静寂冬の山
和田紀夫
春一番沼さざなみの細濁り
鎌田光恵
鴨は群れ鷭は屈託なく泳ぐ
原田達夫
古マッチぼうと音立つ余寒かな
松林依子
どのレモン採らうか牡蠣の冷めぬ間に
田原陽子
上り雲燃えて節分富士没り日
数長藤代
葱焼いて坦坦と過ぐ自粛中
笠井敦子
年の豆音を先立て炒りにけり
田部井幸枝
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寒麦集より
春の園飛ぶ子投げる子転がる子
山内洋光
新海苔のパリッパリッと手巻寿司
立花光夫
寒月光アンモナイトの渦に塵
齊籐哲子
小声にて二日の夜の豆を撒く
宮ア根
田の神よ降り来よ畦のいぬふぐり
奥井あき
血管の太きを捜す二月尽
遠山みち子
ジョギングの母子の呼吸冬木の芽
木澤惠司
正しくは葉ごと食ふべし桜餅
森 しげる
金色の日の帯流す春の川
山本久江
うららかや生存確認朝メール
柴田歌子
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羽音抄
魚は氷に上りて雲ははぐれけり
木澤惠司
薄氷を透かして君の笑ふ顔
和田紀夫
波が波巻き込むやうに冬の海
濱上こういち
神籤ひくやうに封切る朧月
鎌田光恵
公魚の釣られし態のまま凍る
宇都宮敦子
缶詰が結納子猫貰はるる
山内洋光
春の虹半病人の願ひごと
宮ア根
待春のグランド隅にトンボニ基
甕 秀麿
雛人形揺るる十年目の余震
松林依子
立春やぐいつと開く蔵の窓
西村とうじ
山笑ふ猫車とは儘ならぬ
五十嵐紀子
飛ぶ砂のぴしり頬打つ浜二月
西村将昭
七曜を確かむ暮らし春炬燵
野口和子
処理水の千余のタンク冬満月
渥美一志
夜のしじま探る蜆の舌ニミリ
みたにきみ
読み止めしページに余寒はさみけり
佐藤晶子
ドアノブにマスク吊して朝寝かな
立花光夫
親株を離れにつこり蕗の薹
西嶋久美子
束の間の同居ひと間に雛飾る
伍島 繁
夕東風やトラック円く角曲る
橋洋子
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