鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和3年3月号より
代表近詠
横雲
橋道子
太梁のやうに横雲十二月
大銀杏いまし枯れむと発光す
立ちつくす枯荻に風怯みがち
口固くゐるはつまらぬ鮟鱇鍋
着心地のよくて似合はぬカーディガン
数へ日の昼餉しづかに河豚茶漬け
朗報を謝しつつたたむ冬紅葉
歳晩の雨や師恩のいまさらに
「アマゾン」より届く聖夜のプレゼント
来る年を恃む眼鏡を二つ買ひ
当月集より

木鋏の音のはきはき十二月
山ア靖子
細波の綺羅の真中にクリスマス
荒井和昭
壮年を君付けで呼ぶちやんちやんこ
田村園子
ヘルメット連ね年末パトロール
田令子
物分かり良き木に干せり冬の靴
加藤峰子
物音のことりとひとつ冬に入る
相良牧人
憂国忌切出しナイフ逆剝けに
荒木 甫
太平洋見てゐる十二月八日
石田きよし
枯れきつて淡きほてりのゑのこ草
成田美代
朔風になはて横切る猫車
山口ひろよ
藁納豆ほどく夫在るごと朝餉
中山皓雪
山坂にふんはり冬のあさぎまだら
箕輪カオル
木の葉髪見せ消ち増ゆる住所録
平野みち代
顔の無く貌過ぐ街や年つまる
甕 秀麿
葡萄棚の枯れに纏はる甲斐の風
宇都宮敦子
煤払ディサービスに避難せり
山本無蓋
明け方の冬菊殊に香を強く
坂場章子
冬ぬくし付箋のメモの壁に増え
和田紀夫
節榑の根方に冬芽ありにけり
鎌田光恵
半天に白き三日月冬夕焼け
原田達夫
凍つる夜の三越裹の精肉店
松林依子
親方は補聴器忘れ松手入れ
田原陽子
師走かな生き抜くつもり新手帳
数長藤代
瞑想の中を笹子の過りけり
笠井敦子
物の具をつけて構へる冬の松
田部井幸枝

寒麦集より

突然の恩師の訃報寒牡丹
柴田歌子
侘助を白磁の皿に浮べたり
塙 貞子
あるがまま老いて明るき冬帽子
山内洋光
裸木となりて放下の如きかな
木澤恵司
スケボーの子ら冬麗の袋小路
島田喜郎
沢庵漬け予約果たして兄逝けり
澤田美佐子
渾身の力漲る冬木の芽
江波戸ねね
あかときの一瞬やぶる初鴉
遠山みち子
布巾乾し家事解放や花八手
重廣ゆきこ
桜肉並ぶ店先雪催ひ
藤沢秀永

羽音抄

登仙の跡冬霧の封じたる
宇都宮敦子
よき音で折れる枯木の空元気
山内洋光
享年に目の行く葉書年の暮
和田紀夫
熱心に聞いてゐる振り懐手
西村将昭
鬱鬱とポインセチアのからくれなゐ
山口ひろよ
なまこにも太りし奴がゐて平和
遠山みち子
麦蒔く人その後土をかける人
中山皓雪
藁の香をきつちり絞る牛蒡注連
箕輪カオル
遠会釈の笑みをもどして冬耕す
石田きよし
海鳴りの星の尖りて燗熱し
木澤恵司
越南の地雷目覚むな冬の畑
森しげる
冬の川ひとすぢとなる電車の灯
原田達夫
残生も海鼠もつかみどころ無し
安井和恵
世界一小さき教会枯葎
田部井幸枝
木のベンチの穴に団栗つまつてる
重廣ゆきこ
着ぶくれて川浚ふ人応援す
中下澄江
白菜の尻煩悩を呼び覚ます
中村久一
まづ風を孕ます袋落葉搔
土門なの子
月冴ゆる真赤に染まるスカイツリー
江波戸ねね
冴ゆる月ほろ酔ふ人の道しるべ
尾川美保子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved