鴫

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令和2年11月号より
代表近詠
朝露
橋道子
後ろ手にホックを止める蟬の朝
簪よりその箱気に入る浴衣の子
猛暑とのみ記す家計簿の日記欄
朝露や師の忌の光痛く受く
終刊の二誌を惜しめばつくつくし
子を背負ふかたちの雲や敗戦忌
背縮むみづみづの梨剝く間にも
げんまんは小指でなくちや鳳仙花
葛の花噓も隠しもありし頃
盆の月夜更かし癖の屋根二つ
当月集より

山の日の十指かざすは安達太良に
山ア靖子
藪蚊出て腓咬まれてしまひけり
荒井和昭
豊水のダム湖を渡る夏の月
田村園子
マリーゴールド週明けは元気良く
田令子
宵まつり赤い鼻緒の恋二十歳
加藤峰子
空蟬の大きアリバイ残しけり
相良牧人
あぢさゐのいろのくづれて老懶に
荒木 甫
灯火親し閲覧室のある書店
石田きよし
凌霄の視野の続きの遠嶺かな
成田美代
在りありと横顔に噓透百合
山口ひろよ
あの町も自粛に暮るる冷奴
中山皓雪
稲の花わんさわんさと雀どち
箕輪カオル
黙禱の一分麦茶噴いてをり
平野みち代
香水にイエスかノーか攻めらるる
甕 秀麿
海月見る眼が玻璃に動きをり
宇都宮敦子
夜は長し昔小説今ユーチューブ
山本無蓋
みんみんの声久闊を叙するごと
坂場章子
芳一のやうに蚊除けの塗り忘れ
和田紀夫
磯小蟹一斉といふはす歩き
鎌田光恵
病む人へ彩どり凝らす夏料理
田原陽子
牛蛙闇にひと鳴き水の音
数長藤代
蟬殼に残る白糸遺書めきて
原田達夫
はたた神近づくと見て草さはぐ
笠井敦子
氷水供へてよりのひと日なり
田部井幸枝

寒麦集より

ざくと鳴る草刈鎌の重さかな
山内洋光
壊れ物あつかふやうにかき氷
木澤惠司
夏蝶に風生む力ありにけり
佐藤晶子
町ぐるみすつぽり昼寝旧街道
松林依子
海霧刻みジェットホイルの着岸す
藤沢秀永
美人画の壁に凭れて三尺寝
足立良雄
病窓に真砂女の海や夏の雲
安井和恵
朝空を掃き清めたる朴の花
三木千代
炎天へ洗ふ予定のシャツを着て
島田喜郎
処暑の朝保証書付きのペンダント
西嶋久美子

羽音抄

萍を掬ひて五指を草に拭く
加藤峰子
一を聞き十知る蟻の立ち話
今井忠夫
月下美人背中合はせの運不運
来海雅子
かき氷余して無言老夫婦
松林依子
毒見せり地球の裏の青林檎
藤沢秀永
真ん中に祖母一人居る夏座敷
西村将昭
青竹のあをあを雨の大暑かな
山本久江
ポタージュが鍋ごと据わる冷蔵庫
宇都宮敦子
はんざきの信じてをりぬ進化論
渥美一志
塩振るを家訓のやうに食む西瓜
和田紀夫
本に帯あり吾に帯なきサンドレス
平野みち代
青蚊帳を大事に蔵ひ失くしたり
みたにきみ
爽涼や歩くことのみ残されて
山本無蓋
水道が人気の遊具夏ひろば
島田喜郎
街中の吾は炎天のひとかけら
佐藤晶子
元通り畳めぬ花は鳥瓜
森 しげる
炎天の食入るショルダーストラップ
川瀬 康
朝顔や寡黙に戻る夜勤の子
小林喜美枝
本めくる手を暫くは落花生
大島節子
この山の心音として滴れり
土門なの子


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