Shigi-haikukai
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令和2年10月号より
代表近詠
マンゴー
橋道子
あめんぼう影を斜めに跳ねとばす
梅雨夕焼つげ義春も白髪に
吹きにふく風に呻くか猿麻桛
梅雨の雷夜空を疲れさせにけり
三枚におろすマンゴー貝風鈴
炎天や遮断機急に下りさうな
下草を虎刈りにして飲むラムネ
ひとまはり小さく嫂来る日傘
月涼し文読めばまたつのる謝意
コロナ禍とふ実験箱の中の夏
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当月集より
蚊遣香のの字たのみのひと仕事
山ア靖子
おほげさに揺れてほころぶ青芭蕉
荒井和昭
虹の色揃ふサラダや梅雨晴間
田村園子
北限の樹林海霧満ちて来し
田令子
朝涼や目を撫づやうに眼鏡ふ
加藤峰子
どことなくコロナ象る夏薊
相良牧人
今生をいささか余し棙れ花
荒木 甫
水を切る蟇にもこころざし
石田きよし
石段のくぼみ閑かや合歓の花
成田美代
大池の波立つほどに時鳥
山口ひろよ
ペディキュアの素足ばら色老いてなほ
中山皓雪
用水をたどる夕暮れ通し鴨
箕輪カオル
白靴を下ろすに図るタイミング
平野みち代
外出の何処も鬼門梅雨の蝶
甕 秀麿
天帝に尻てらてらと女郎蜘蛛
宇都宮敦子
せせらぎはレシピのかなめ川床料理
山本無蓋
詫び文の載る社会面火取虫
坂場章子
浮き球の流れ着きたる梅雨の浜
和田紀夫
沖膾ひかる海原しぶく水脈
鎌田光恵
七夕を待ち切れず母みまかりぬ
田原陽子
神判めく医学部初診梅雨晴間
数長藤代
なめくぢり今日は加害者地虫食む
原田達夫
久々にシナトラを聴くみどりの夜
笠井敦子
覗かせて貰ふ胸の嬰梅雨の晴
田部井幸枝
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寒麦集より
止り木に辿りつきたる夏帽子
中島芳郎
草刈りの女駅員改札す
松林依子
半眼の蟇の木戸番村歌舞伎
奥井あき
単線の車輛に蝿ののつてをり
宮ア根
ぎしぎしや飴色に川濁りたる
山本久江
てきぱきと妻の指示受け盆用意
濱上こういち
特急の通過する駅濃紫陽花
渥美一志
下闇に杖に顎載せゐたりけり
西村とうじ
打ち揃ひ風上を向く鵜のコロニー
西嶋久美子
口も手も達者な農婦田草取
塙 貞子
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羽音抄
辣韭掘り土に叩きて土おとす
鎌田光恵
涼しさや指触れて文字読まれをり
五十嵐紀子
疾駆せる万馬の鬣青田波
甕 秀麿
西日さす書架よりぬつと紙いきれ
木澤恵司
いつか来るさういふ日来る梅雨の月
西嶋久美子
西国を流離ふ長子走り梅雨
渥美一志
百合の香や墓前に嬰を見せにゆく
加藤峰子
百合匂ふ心にも無きことを言ひ
山口ひろよ
夏霧や色にて分かる人の粒
箕輪カオル
蟻の穴噴火口めく蟻が蟻が
荒木 甫
水番の白鷺じつと水口に
山本久江
酢に咽ぶ嘘つくときの心太
山内洋光
忙しなく不動産屋の熱帯魚
西村将昭
銃向けるごとき検温梅雨の雷
足立良雄
明るき記事を搜せども鰻食ふ
小宮智美
木洩れ日の右往左往や梅雨嵐
勝山 信
舞ひ上る真昼の匂ひ水を打つ
中村久一
書を曝すコロナ自粛といふ余白
立花光夫
力ップ麺啜る幽霊舞台裏
今井忠夫
ヘルメットのひも跡白く昼寝かな
八尋みなみ
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