鴫

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令和2年8号より
代表近詠
距離
橋道子
パソコンの「ゴミ箱」空に五月来ぬ
どこからか「ゴンドラの唄」傘雨の忌
花は葉にセルフカットの髪をどる
蟄居とはチャレンジのときレース編む
人に行動変容あぢさゐに変種
さびさびと人住み替る夏邸
ハンカチやその人にのみ見せる貌
耀へる葉を前衛に黐の花
青鷺の睥睨巨樹の真中より
青嶺とも人とも距離をおく月日
当月集より

人遠く水にしたがふ菜種冷
山ア靖子
浅間に拾ひしのろや蔦若葉
荒井和昭
アポロンの許チューリップしどけなし
田村園子
初夏の川沿ひを行く回り道
田令子
機嫌よきシーツ端午の銀の風
加藤峰子
五月来て見しはあだ花うつろ花
相良牧人
つつじ咲く白き門扉のパン工房
荒木 甫
ふらここや敗けず嫌ひの三姉妹
石田きよし
人恋のごとき葉擦れや薄暑光
成田美代
山峡に八汐躑躅の日和かな
山口ひろよ
映画疲れコロナ疲れや花は葉に
中山皓雪
紙風船叩きて生るる半濁音
箕輪カオル
転ぶ児に犬の駆け寄る茅花の野
平野みち代
もんぺ姿に八十八夜の里の路
甕 秀麿
風を聴き雲を眺めて雁供養
宇都宮敦子
三密のデイに五月の風入れよ
山本無蓋
とりどりに開き五月の花静か
坂場章子
インカの名冠す馬鈴薯植ゑにけり
和田紀夫
亀ゆるく流されてをり沼のどか
鎌田光恵
寄す波のリズムに揺れる浜昼顔
田原陽子
昭和の日来歴句碑の川静か
数長藤代
赤く着崩れ白く惚けし茅花かな
原田達夫
穴子飯容易に増えぬ骨密度
笠井敦子
いい夢の為の一歩や麦の風
田部井幸枝

寒麦集より

かぎろひて人影さらふ遠野かな
奥井あき
蛇衣を脱ぐアリバイを残すため
木澤恵司
爪切るや祭囃子を遠く聞き
立花光夫
スペイン風邪に奪はれし祖母桐の花
松林依子
身の内を見透かされをり水中花
江澤弘子
春マスク中途半端な笑ひ顔
濱上こういち
縦列に進む雲水緑立つ
藤沢秀永
風光るバット構へる子の風格
来海雅子
がらんどうの校舎飛び交ふ燕の子
三木千代
豆ごはん曲り角まで母の声
小宮智美

羽音抄

潮焼の漢唾して縄を綯ふ
平野みち代
玉苗の風の水輪にすぐ馴れる
佐々木秀子
夏の陽へ裏返されて赤子這ふ
加藤峰子
コロナ禍の今しんしんと柿若葉
箕輪カオル
鬱憤の山にもありて杉花粉
三木千代
刈り了へし羊園児にいたはられ
五十嵐紀子
薔薇の香に塗れてとんと出掛けない
山口ひろよ
沼の洲やおごめきて軽鳬の子目醒む
鎌田光恵
夏浅し腕捲りして何をする
宮ア根
無観客試合のやうな花吹雪
石田きよし
振りかぶる斧のリズムに散る桜
宇都宮敦子
夏来るかつかつ削る鰹節
甕 秀麿
しろつめ草いつぱい咲いてゐる孤独
佐藤晶子
誰も知らぬ巨石の歴史片かげり
川瀬 康
料峭や吸ひ込み荒きATM
重廣ゆきこ
母の日のコロナで終る子の電話
小宮智美
用水の音つつましく植田かな
中村久一
いただきまする厚切りの初がつを
鈴木征四
薫風や待てばテラスのドリップ珈琲
佐藤宏樹
噴水に前後左右のなかりけり
太田英子


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