鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和2年7号より
代表近詠
地球史
橋道子
たはむれに折れば乳吹く野芥子かな
利き手まだ決まらぬをさな土筆摘む
装幀の桜がさねの映ゆる本
亡き人の句座にいくたり春の夢
釘入れて桶の浅蜊をそそのかす
細き身に王女の香気フリージア
ムニエルの焼き色きつね昭和の日
国いつも何かを隠し春マスク
この春を惜しみ惜しまず外出せず
地球史の今をたしかに愁ふ春
当月集より

菩提寺へしだれ桜の待ちをれば
山ア靖子
石囲み舞台のやうや踊子草
荒井和昭
青空を残して桜散りにけり
田村園子
鶯や住宅団地境界に
田令子
花時の夜を音なく文机に
加藤峰子
一体となれぬ淋しさ散るさくら
相良牧人
「赤旗」に包み筍とどきけり
荒木 甫
鳥雲にコロナ渦中の地球かな
石田きよし
蝌蚪群れて靨の生るる水の面
成田美代
岩に添ひうつらうつらの春の滝
山口ひろよ
散るさくら散らざるさくら散る吐息
中山皓雪
歌垣の山に応へて牡丹雪
箕輪カオル
さくらさくら散りゆく先の日の温み
平野みち代
乱暴に吹くほど多きしやぼん玉
甕 秀麿
安心な間合なるべし亀鳴けり
宇都宮敦子
蜃気楼子供三人成したのみ
山本無蓋
億万の祈り舞ふごと春の雪
坂場章子
職終へる日のネクタイは春の色
和田紀夫
合戦の蛙の沼や花時計
鎌田光恵
風生の句碑や桜をやや離れ
田原陽子
目の前のものを探して春かなし
数長藤代
新しき街に神木茅吹きたり
原田達夫
雁帰るどちらの国も病んでをり
笠井敦子
ぽかぽかの朝の布団を蹴り起きる
田部井幸枝

寒麦集より

出でよ見よ雲なき空に里若葉
森しげる
魚跳ねてみよせせらぎは春の音
松林依子
再開の一番列車菜の花野
三木千代
舟底を時折打ちて春の磯
西村将昭
老骨の天空駆くる春の夢
中島芳郎
餌台の水新しく山椒の芽
重廣ゆきこ
泡立ちてきらめき走る春の潮
佐藤晶子
花冷やバーボンを乾すカフェテラス
藤沢秀永
何も言はず側に居るだけ桜餅
安井和恵
ほたるいか飲まぬ予定をふきとばし
島田喜郎

羽音抄

舶来の二豎をひそめる霞かな
中島芳郎
人の死の遠くにあらずリラの花
和田紀夫
密やかにスープ煮詰まる花の冷
成田美代
白木蓮大志と言ふは抱くもの
荒木 甫
我が庭に不要不急のフリージア
濱上こういち
鳥帰る空に余熱のやうなもの
相良牧人
会さずとも心繋いでさくらさくら
坂場章子
惜春の大学ノート閉ぢしまま
田令子
落椿あまたを供花の墓一基
松林依子
しやぼん玉いくつとばせば気がすむの
木澤恵司
春の水転がるやうなピアノの音
山本無蓋
往路より帰路の白さや雪柳
青木ちづる
いとをかし酒も団子もなき花見
渥美一志
よく笑ふ男ありけり花筵
森 しげる
花冷や夫の古シャツ裾むすぶ
奥井あき
弁松に寄り足早の花見かな
西村とうじ
コロナ菌に似たるが悲し落椿
今井忠夫
水温む大きな鯉の大あくび
近澤 宏
其はてふの外ならずなり花水木
向山加行
春眠の空飛ぶ夢に疲れけり
橋洋子


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved