鴫

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令和2年5月号より
代表近詠
ふらここ
橋道子
沼尻に手薄となれり鴨の陣
立春の蓮池の底透けてをり
駒返る草や家鴨の前のめり
芝居観と決め飜す春コート
芽の柳八重子久里子の意気地かな
印房の小さく灯し春浅し
靴いつもきれいな人の春マスク
正体の見えぬウイルスを怖る春
咲きそめし実生の椿炎のごとし
わが死後のやうにふらここ日差なか
当月集より

初句会術後の笑みをまのあたり
山ア靖子
目鼻立ち確とせぬなり座り雛
荒井和昭
温もりと膨らみ残る手套かな
田村園子
囀の不意に間近し植樹帯
田令子
春雪の富士撮るだけに上がる橋
加藤峰子
くまモンと並び売らるる晩白柚
相良牧人
春遅々と赤鉛筆の芯円錐
荒木 甫
佐保姫と西郷像の逢瀬かな
石田きよし
朝日いま彩を豊かに斑雪山
成田美代
冬雲の重きを怺へ日本海
山口ひろよ
独楽まはす人の老いゆく土地も老ゆ
中山皓雪
雨の綺羅とどめて谷戸の梅真白
箕輪カオル
耳聡し大寒の朝動き出す
平野みち代
ホームへとマスクがマスク押し出しぬ
甕 秀麿
獅子舞に噛まるる番の廻り来し
宇都宮敦子
春浅し生家はすでに駐車場
山本無蓋
目を伏せるかに傾けり水仙花
坂場章子
古本に昭和のレシートうちらけし
和田紀夫
節榑の指や煮豆の湯気立てて
鎌田光恵
病む人と仰ぐ花芽のほんのりと
田原陽子
花を待たず一本桜の伐られけり
数長藤代
風花や果樹園からの鋏音
原田達夫
気散じのついでに探す蕗のたう
笠井敦子
勤務先農協と決む初苺
田部井幸枝

寒麦集より

けふ雨水金時豆を漬すかな
山本久江
冴ゆる夜の引売りに買ふフランスパン
松林依子
大鍋の蕎麦湯の滾りしづり雪
木澤惠司
加湿器の音よりかすか母の息
みたにきみ
針供養母の束ねし躾糸
宮川智子
噛みちぎる力の欲しき燗の酒
立花光夫
門前に乳母車置く梅日和
中下澄江
爪切つて一日終へけり目借時
中島芳郎
近道はここぞとばかり春一番
濱上こういち
潮騒を夜ごと奏づや桜貝
塙 貞子

羽音抄

古巣持ち電柱下りる工夫かな
山内洋光
股引の山師の祖父の血を引きぬ
相良牧人
紙漉女しづかに木の葉閉ぢ込めぬ
山口ひろよ
ハーモニカ吸へばファの音山笑ふ
平野みち代
大兄と宛名に付けて桜鯛
足立良雄
虹色に風を染めつつ石鹸玉
宇都宮敦子
重ね着や日記はいつか曝さるる
甕 秀麿
春満月何を吸うたかふくらめり
森しげる
暗算をすれば始まる花粉症
田令子
枯山はことろことろの声のする
遠山みち子
十分な笑ひ果たせずマスクして
濱上こういち
押し殺すときめきもあり寒牡丹
三木千代
早春の湯の香の里の理髪店
木澤惠司
料峭の光を吸うて松の脂
坂場章子
夜叉の面当てて下界の櫻見る
田部井幸枝
バレンタインデー年金少し取り崩す
齊藤哲子
磯の香や小体な店の牡蠣フライ
立花光夫
寒明や朝日に当てる豆腐箱
西村とうじ
紅椿挿すそれだけの誕生日
加藤東風
薄氷の漸う乗せる葉一枚
八尋みなみ


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