鴫

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令和元年11月号より
代表近詠
泣角力
橋道子
秋蟬の杜たぢろがす泣角力
泣けとこそ行司声張る天高し
泣角力終えたる手形小さきこと
老斑を稚に撫でられ涼新た
茂れるを暴るると言ふ庭師かな
九月一日俎板を新しく
秋噴水明日会ふために別れけり  
浦安吟行三句
佃煮の匂ふ浦町風は秋
露けしや旧家の土間は川に向く
潮風に髪ふくらめり鯔の群
当月集より

いちまいの葉書にちから雲の峰
山ア靖子
水舐めて塩烏賊を干す日差しかな
荒井和昭
身を棙るみみず真昼のアスファルト
田村園子
秋めくや活字小さき紀行文
田令子
サッカー児の伸びしろ無限いわし雲
加藤峰子
今朝秋の太平洋上渦三つ
相良牧人
朝顔が一つ咲いたよありがたう
荒木 甫
立ちつくす敗戦投手秋夕焼
石田きよし
夏草の底に流るる水の音
成田美代
高原の風音奏づ扇風機
山口ひろよ
点滴のすれ違ふ廊秋暑し
中山皓雪
噴水の一歩も引かぬ威勢かな
箕輪カオル
風入るる書斎の夫の旅鞄
平野みち代
自販機より富士山の水広島忌
甕 秀麿
禅寺の真昼涼しき深廂
宇都宮敦子
酒好きの家系の端に酌む冷酒
山本無蓋
葉の裏に今ばらけんとする毛虫
坂場章子
八月や身のひとところ疼き出す
田原陽子
糸月に色川風に待つ花火
数長藤代
あをじろきものあかつきに蟬になり
原田達夫
質店の名残の土蔵晩夏光
笠井敦子
生まれ日が山の日となり遠くをり
田部井幸枝

寒麦集より

ほうたるの向ふ側より呼ばれけり
遠山みち子
風鈴の舌を斜めに延ばしたる
和田紀夫
射的場のコルクの湿り半夏生
木澤惠司
ピンバッジ抜くくたくたの夏帽子
齊藤哲子
八月のダリの懐中時計かな
中島芳郎
あきんどに縁なき出世秋刀魚焼く
宮ア根
原爆忌異形の雲の記憶なほ
奥井あき
酒店にどつかと据る祭獅子
鎌田光恵
海風に朽ちたる社蟬の穴
西嶋久美子
かき氷崩す少女の付睫毛
山内洋光

羽音抄

原爆忌何時までも猶いつもなほ
五十嵐紀子
墓洗ふ被爆語らず逝きし父
平野みち代
出穂の香の底に一村千枚田
甕 秀麿
炎昼の連結音は地を這ひぬ
山内洋光
澄む水の空の流れてゐるやうな
成田美代
踊手の静かに進む片通り
田令子
憲法は日本の素顔敗戦忌
足立良雄
はたた神監視カメラは伏し目がち
荒木 甫
剝れゆく雲を間近にお花畑
箕輪カオル
かなかなや古希とは人に頼らるる
加藤峰子
耳よりな話あるかに軒風鈴
相良牧人
尺蠖であること嫌で身を棙る
山本久江
秋揚羽譜面離れし音符めく
石田きよし
くちなはの好む薄闇吾も持つ
みたにきみ
尻上がるふる里なまりばつたんこ
中山皓雪
地下鉄にトラウマ残り終戦日
三木千代
秋暑し洗ひざらしの風の中
鈴木征四
虫干や粗忽を記す通信簿
西村とうじ
遠き日の父母の真中に遠花火
斎藤房枝
不規則に玉葱刻む代打夫
近澤清美


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