鴫

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平成30年11月号より
代表近詠
風樹
橋道子
八月の風樹いつぽん炎のかたち
新涼や頂上にある県境
かしこまる狐と出あふ葛嵐
高原の秋の花火の透きとほる
浮人形「ゐないゐない」は「ばあ」を待つ
朝市の作りつつ売る鰻飯
盆波の八戸にゐて師の忌なり
玫瑰や雲を引つぱる紺怒濤
八月十五日ラーゲリの句会録
思ひ出の重さに軋む籐寝椅子
当月集より

侘びるかに渡り来る風夜の秋
山ア靖子
蟷螂のぎくぎく歩む広葉かな
荒井和昭
感声を伴ふ転舵蓮の花
田村園子
鰯雲流れの速し通過駅
田令子
バスに乗る傾斜涼しき車椅子
加藤峰子
みんみんのその一念をたふとべり
相良牧人
甘藷焼酎コミュニストK君逝きにけり
荒木 甫
空蟬の泣き出しさうなしばし待つ
石田きよし
巌稜を先へ先へとひた灼くる
成田美代
解説は講師のピアノ夏季講座
山口ひろよ
炎昼や家裁で開ける遺言書
中山皓雪
大文字草清らなり行者径
箕輪カオル
語り部のごと八月の太田川
平野みち代
コンビニ無き島に住まひし人涼し
甕 秀麿
夏館靴ぬぎ石の臥牛ほど
宇都宮敦子
みんみんを越えれば油蟬の国
山本無蓋
羽化の場を目指して蟬の強き爪
坂場章子
炎帝に挑む修業に似たるかな
田原陽子
発送のあと初ものの梨囲む
数長藤代
飼ひ犬を離れて亭主夕端居
原田達夫
雨あがり紫紺深める名残茄子
笠井敦子
空蟬の爪の離さぬ腕重し
田部井幸枝
氣をつけてゐても躓く白日傘
齋藤厚子

寒麦集より

原爆忌ホースの中の水熱し
齊藤哲子
一湾へなだるる遺跡大夏野
松林依子
ピザ生地をくるくる回す指涼し
木澤惠司
閻魔への土産気遣ふ生身魂
中島芳郎
鯔飛んで潮入池のざわめけり
遠山みち子
一枚の書かず了ひの夏見舞
西嶋久美子
今年から売地となりし稲田かな
濱上こういち
教科書を墨で消したる敗戦忌
山内洋光
炎天へ逃げず隠れず靴の紐
柴田歌子
毋在せば百歳なりし敗戦忌
和田紀夫

羽音抄

からたちの真青なる棘不死男の忌
原田達夫
夏の夜の作用点めく赤き星
和田紀夫
萩むらのなだるる中にある気概
加藤峰子
過ぎてゆく日々惜しからぬ猛暑かな
島田喜郎
空蟬のこの世へいつとき爪を立つ
荒木 甫
星流る安房の棚田の鎮もりに
鎌田光恵
抜くことで出せる力ぞ今朝の秋
村 卯
敗戦日書棚の隅の不倒翁
足立良雄
台風の逆走隠れキリシタン
中山皓雪
花火師に捧ぐライトの振りやまず
安井和恵
椎の実のころがり手話の華やげり
森 しげる
銀やんま飛ぶや図面を引くやうに
坂場章子
風灼きて大弓なりに電車来る
山内洋光
おはじきのはじかるるごと星飛べり
木澤惠司
象の耳のやうに芋の葉動きけり
小林喜美枝
風鎮を耳につけしを言はざりき
遠山みち子
山脈を黒一色に大夕焼
西村とうじ
五百羅漢なべて猫背や秋あかね
立花光夫
鍵穴へ花火の余韻差し込みぬ
佐藤晶子
端居して空の落書見てゐたり
幸 俊雄


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