鴫

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平成30年10月号より
代表近詠
梅雨上がる
橋道子
つんのめる弾みのやうに梅雨上がる
梅雨明の真夜を白雲片流る
青嵐指輪耳輪をつけず来て
真清水や両肘締めて顔洗ふ
風を呼ぶもののひとつに蟬の殼
己が名を知らぬあはれや悪茄子
炎昼をすれ違ひたる文と文
帰省子の父親ぶりの負ぶ紐
瓜揉んで節電説かぬ世を怖る
菊判の句集を開く夜の秋
当月集より

やがて去る地をすれすれの夏燕
山ア靖子
ねぐらへの青田を渡る鴉かな
荒井和昭
源流のしぶき軽やか虎耳草
田村園子
松葉牡丹スクールゾーン入口に
田令子
半夏生この闇こそがをんな坂
加藤峰子
地に落ちて蜂起のさまに花デイゴ
相良牧人
きのふけふあしたもきつと冷奴
荒木 甫
採るだけが仕事の妻のトマト評
石田きよし
偕老の鼻先にある酷暑かな
成田美代
脚立より生り年ですと実梅籠
山口ひろよ
史の滲む水の佐原の夏柳
中山皓雪
天牛のもんどりうつて飛ぶ気配
箕輪カオル
幼児の旋毛ふたあつ蟻の列
平野みち代
扇風機呼吸乱さず止まりけり
甕 秀麿
救急車虹をそびらに疾走す
宇都宮敦子
へらへらとへうたんの花塀に揺れ
山本無蓋
ボール蹴る画面へ固唾夏の夜
坂場章子
音程の妖しくなりし夜の蛙
田原陽子
謂れなき怒り受けたり水中花
数長藤代
ファッションの黒いいでしよと揚羽蝶
原田達夫
一山は四葩の海と化してをり
笠井敦子
円を描きコキアの移植真中へ
田部井幸枝
海の日の川に家族のほとほとす
齋藤厚子

寒麦集より

でで虫の一念にして一歩かな
中島芳郎
読経の僧のテノール梅雨晴間
和田紀夫
遠雷や目を閉ぢて耐ふ歯の治療
足立良雄
今朝釣りてふ鯖の味噌炊きこさへをり
鎌田光恵
本気出す妻から逃げる油虫
濱上こういち
白シャツの衿を叩けば鳩の翔つ
奥井あき
土踏まず跡盛り上がる夏の浜
松林依子
水槽に目高三匹待合室
伍島 繁
彩りの豊かな薬味冷さうめん
青木ちづる
「みんみんが聞こえた」補聴器つけて言ふ
岩本紀子

羽音抄

みちのくの湯宿に重き夏布団
松林依子
掃くやうに青田を走る雲の影
西村将昭
風捌く力ありけり青すすき
山本久江
海の日や焦がるる山に逝きし人
成田美代
大夏野分岐に牛の塩くれ場
箕輪カオル
幹に凭れば夏越の水ののぼる音
宇都宮敦子
花氷触れられぬ距離保ちをり
山口ひろよ
夏の蝶舞をさらさら走り書き
濱上こういち
プロテクター西日に干して入部せり
加藤峰子
ライン来るさうかこんにち父の日か
石田きよし
声のなき世を生きのびてなめくぢり
齋藤厚子
毛虫這ふ下総台地また揺れて
平野みち代
運鈍根捏ねしと曰く冷し麦
藤沢秀永
青嵐コントラバスの太き意志
木澤惠司
夏服の人型ロボット銀行員
村 卯
嚙み合はぬ話し併せて涼しかり
澤田美佐子
裾野まで抱へ込んでる大夕焼
伍島 繁
頼られし子をたよる身や額の花
中村明子
地に置けば噴き上ぐるやう仏桑花
宮川智子
腑に落ちぬ話とはいへ鰻飯
前田惠治


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