鴫

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平成30年8月号より
代表近詠
一雨
橋道子
擬宝珠の花のモーブに雨怒濤
花ぎぼし一雨に色を攫はるる
水打つて育休教師ハンサムな
微笑より苦笑の似合ふ更衣
月見草潮騒は誰も止められず
掘りたての蟹の穴より小風かな
こぼれ咲く不思議のひとつ文字摺草
紋章のごと青鷺は樹の真中
実梅落つ音に歩幅を立てなほす
喜びは小さきにかぎる花南天
当月集より

誇らしく天界の域桐咲けり
山ア靖子
そよとして梅雨入り兆しの匂ひかな
荒井和昭
平成の五月一日けふ限り
田村園子
通り抜け行く城下の遅桜
田令子
講堂の足裏のリズム風薫る
加藤峰子
多次元に生きて兜太は春の星
相良牧人
鯉幟風に向かうて口を開く
荒木 甫
乗り換へし客の訛や青伊吹
石田きよし
夏きざす森に定まる沢の音
成田美代
御旅所に爪立ち高山祭かな
山口ひろよ
喪の帯のとぐろに似たる夕薄暑
中山皓雪
流鏑馬の走路五月の風走る
箕輪カオル
風まるく見ゆたんぽぽの絮とんで
平野みち代
輪の細きサイクリング車夏初め
甕 秀麿
余花眺む輓曵競馬の柵に寄り
宇都宮敦子
いざ行かむ青葉若葉の大和路へ
山本無蓋
一周が鳥獣保護区風五月
坂場章子
行く春の濱辺の小石捨てきれず
田原陽子
代表にぱつたり出合ふ夕おぼろ
数長藤代
小雀も街の雀となりにけり
原田達夫
雲雀落つ声は後からついてきし
笠井敦子
目覚ましや母の日ですと宅配夫
田部井幸枝
水浴びをよろこぶ鸚哥麦の秋
齋藤厚子

寒麦集より

山鳩と眠りを分かつ春あけぼの
松林依子
筑波嶺を胴上げしたる麦の秋
中島芳郎
夕明り使ひ切りたる田植かな
中村久一
苧麻を乾す昼の唄者は口噤む
奥井あき
妥協することの多くて武者人形
濱上こういち
アルミ缶こきこき鳴らす春愁
木澤惠司
武具店の金の太文字春の雷
宮川智子
里若葉足湯して待つ一両車
安井和恵
触角はガンマンの態なめくぢり
鎌田光恵
後ろ向き走る機関車麦の秋
和田紀夫

羽音抄

どの駅も人のふるさと合歓の花
中山皓雪
信念を持たぬ軽さよ心太
宮ア根
茅花野や球児にうすと辞儀さるる
鎌田光恵
鯉のぼり水の恋しき時垂るる
甕 秀麿
虎杖を手折れば発す青き音
荒木 甫
はつ夏の老サーファーは砂に寝て
岩本紀子
看護師は新人医師は更衣
足立良雄
ふところに川抱く街の翡翠かな
石田きよし
メーデーの流れ解散それが縁
相良牧人
山法師瀬戸に連なる油槽船
藤沢秀永
塩田の地図に小さき蟻の這ふ
原田達夫
風若葉退院に積む車椅子
五十嵐紀子
武者人形背負ふ受付畏まる
西村とうじ
水下駄の乾きて軒に旅の宿
三木千代
若葉の夜水に九輪のつまびらか
田部井幸枝
結局はわたしの逃げ場草むしり
中下澄江
割り切れぬ数字追ひかけ蟻の列
伍島 繁
車椅子は眼鏡と同じ額の花
小宮智美
梅霖や指で確かむ頬の疣
向山加行
首のもの取つたり着たり穀雨かな
重廣ゆきこ


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