鴫

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平成30年7月号より
代表近詠
予感
橋道子
桜さくら一本も千本も
石段は遊具のひとつ飛花落花
磯巾着捕らむ深掘り大囲み
這ひ初めの動画一分みどりの夜
抽斗を閉づればはじけ薫衣香
葉桜の下なら死者と通じさう
青葉して読めぬ予感に買ふ一書
鉄線や好きな言葉に「リスペクト」
迷はずに顎紐つきの夏帽子
新しき眼鏡に傾ぐ青山河
当月集より

風五月散策圈に道の駅
山ア靖子
地蔵前てふバス停の蛙の子
荒井和昭
生くるものをるかと覗く春の川
田村園子
農場の桜並木の通り抜け
田令子
やぶ睨みして緋桃の里に踏み入りぬ
加藤峰子
春燈やルーペの捉ふ一行詩
相良牧人
人の世に生まれてしまうた菫かな
荒木 甫
ほなここにお座りなはれ花筵
石田きよし
抜け道は寺多き街花吹雪
成田美代
花がため一と日を空くる予定表
山口ひろよ
蛇穴を出づ一致せぬ意見持ち
中山皓雪
湖見えてこひのぼり見ゆポプラ並み
箕輪カオル
看板の水原弘島うらら
平野みち代
黄砂降る行きより早き帰国便
甕 秀麿
犬ふぐりに坐すや青空少し敷く
宇都宮敦子
春耕の土黒々と均されて
山本無蓋
ふらここのどちらもポニーテール揺れ
坂場章子
ペダル踏む急がねば散る花堤
田原陽子
散る花の迷うてきたる句碑の裏
数長藤代
辛夷咲く垣内へ迫るブルドーザー
原田達夫
人の目に汚れぬうちの朝桜
笠井敦子
一の井川白ことさらの山吹野
田部井幸枝
悪戯の中に眞実卒業す
齋藤厚子

寒麦集より

足るを知る味噌田楽に酒五勺
中島芳郎
しなやかに風捌きゐる糸桜
山内洋光
うまごやし脱ぎ捨てられしスニーカー
足立良雄
海へ出て艀いろどる花筏
鎌田光恵
花屑の添へる彩り吹溜り
田中裕一
母の手の絮たんぽぽを吹く子かな
島田喜郎
春眠に右肩を貸す車内かな
濱上こういち
卒業の明日は弟子入り宮大工
塙 貞子
立つたまま昼餉の球児梨の花
松林依子
葉桜や眩暈の妻に貸す腕
和田紀夫

羽音抄

悪童が首刎ねてゆく葱坊主
和田紀夫
蟻出づるはや求道者の顔となり
宇都宮敦子
人想ふ速度に梨花の畑となる
加藤峰子
鳥帰る雲をさらつて行くやうに
濱上こういち
わらび来て出揃ふ野菜直売所
松林依子
嵌めしまま軍手を洗ふ菊根分
齊藤哲子
蟻穴を出でて本日より残業
荒木 甫
飽きざるを生業といふ田を植うる
島田喜郎
初つばめ虚ろの胸を驚かす
村 卯
けだるさは寛容に似る蝌蚪の紐
成田美代
初蝶や葉書一枚持つて出て
坂場章子
おそらくは遊び盛りの葱坊主
齋藤厚子
花屑が先に乗り込む始発駅
山囗ひろよ
人悼みをれば散る散る花辛夷
平野みち代
糞ごと鋤く田掻牛の胴ぶるひ
中山皓雪
春昼や馬鹿らしきまで論争す
堀岡せつこ
静かなる老いの反抗春落葉
澤田美佐子
木の洞はいのちの器巣立鳥
山内洋光
花冷や天井低き吟味の間
西村将昭
二時間のふるさと遠し啄木忌
渥美一志


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