鴫

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平成30年3月号より
代表近詠
睫毛
橋道子
鬼柚子の黄のみづみづと顰め面
煮こぼして抜く鬼柚子の味の角
みどりごの欠伸しやつくり毛糸帽
生れたては睫毛を持たず室の花
葱畑をしばし横目に持久走
兄夫婦もう居ぬ街の水仙花
鍋蓋の抓みのゆるみ日短か
まだ残る未来へ青き日記買ふ
山のなき町の小山も眠りけり
悼 中江月鈴子さん
星凍つや字余りに満つ鉄の意志
  
当月集より

面会欄母と記して霜夜なる
山ア靖子
円空仏のやうな木の洞冬日向
荒井和昭
刻む葱仕立下ろしの白さとも
田村園子
十一月終はる明るき曇り空
田令子
井戸盖の朽ちる恩賜の冬庭園
加藤峰子
七五三ホップステップジャンプかな
相良牧人
柚子湯かな色即是空空即是
荒木 甫
新婚のころよりの棹冬日和
石田きよし
白樺の白を育てて雪の朝
成田美代
急坂の復路に出会ふ冬桜
山口ひろよ
流るる年流されさうな人に管
中山皓雪
落し物めく海原の冬鷗
箕輪カオル
赤ん坊に指握られて暖房車
平野みち代
饒舌に疲れきつたる冬紅葉
甕 秀麿
炉明りに両手かざして血を濃くす
宇都宮敦子
年用意せめて羽織の紐を替へ
山本無蓋
水鳥の一羽一羽に小さき水脈
坂場章子
たつぷりと葱刻むなり癒え近し
田原陽子
穏やかに住み古り台地冬の月
数長藤代
尾灯一筋引いてゐるなり冬の川
原田達夫
いつも居し嫗のゐない冬菜畑
笠井敦子
葱貰ふ上気の肌理に見惚れつつ
田部井幸枝
坂多き長崎の朝冬桜
齋藤厚子

寒麦集より

人垣を盾に休らふ浮寝鳥
藤沢秀永
意気地なき己を叱り冬の川
宮ア根
来し方の佳きこと掬ひ毛糸編む
遠山みち子
風凍つる空路の下に住み古りし
齊藤哲子
参道の賑はひ残し山眠る
西村将昭
淋しさも寒さも指に集りぬ
三木千代
思ひつきりのみどを見せる冬の鯉
山本久江
裸木になりて列島痩せがまん
伍島 繁
注連作る小屋に良き藁良き香り
岩本紀子
深雪晴こゑ転がつてしまひけり
森 聖子

羽音抄

マフラーを捲けば根拠のなき強気
濱上こういち
世に遠く生くるに似たる冬ざくら
平野みち代
時雨るるや象の背中に分水嶺
和田紀夫
雲の罅にみづち現る冬の海
原田達夫
人里に通ふ狐の橋ならむ
宇都宮敦子
明日知れぬ世とな思ひそ冬萠ゆる
中島芳郎
浮寝鳥シベリアの夢妣の夢
山本無蓋
やはらかに雲の繋がる冬日和
坂場章子
乾鮭の肩の力の抜けてをり
山内洋光
雪男午後の電車に座り込む
田令子
泥葱を掲ぐ園児の一団来
村 卯
先づ波を宥めてよりの海鼠漁
鎌田光恵
直角に斜めに国境白鳥来
木澤惠司
首伸すは一羽とてなし鴨の陣
石田きよし
今日泊まる島に灯がつく冬の雁
箕輪カオル
一葉と子規にいもうと石蕗の花
松林依子
見てゐれば見られてゐたり枯巨木
甕 秀麿
銅束子買ふだけのこと年の市
五十嵐紀子
イルミネーション灯りそれからの夜長
三木千代
珠算塾さざん花咲いて九九走る
安藤逸扇


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