バックナンバー（鴫誌より）
平成29年12月号より
代表近詠
寒麦集より
羽音抄
まなぶた
髙橋道子
そつと押すものにまなぶた夜の秋
夏惜しむ墓地に一会の人とかな
駅を出てみぎ成田みち新松子
草の実や権現道の迷路めく
焦がしたる鍋干しにけり天高し
衣被育ちの似たる安けさに
小説の場面また飛ぶ虫時雨
粛々とずずこ色づく遠列車
怖気づく我に光つて椿の実
十六夜や問へば応へてくるる本
当月集より夏惜しむ墓地に一会の人とかな
駅を出てみぎ成田みち新松子
草の実や権現道の迷路めく
焦がしたる鍋干しにけり天高し
衣被育ちの似たる安けさに
小説の場面また飛ぶ虫時雨
粛々とずずこ色づく遠列車
怖気づく我に光つて椿の実
十六夜や問へば応へてくるる本
コンクリートの川辺り白き風浚ふ
中江月鈴子
施餓鬼寺へよもや一転救急車
山﨑靖子
おんおんと青松虫のひびきかな
荒井和昭
書きなぐるかに空を切る銀やんま
田村園子
殿様ばつた体育館の正面に
髙田令子
背もたれの窪み愛でるや星月夜
加藤峰子
木の実落つ誤差の範囲でありにけり
相良牧人
白と茶の犬が舌舐め合うて処暑
荒木 甫
生れつき告白下手よ昼の月
石田きよし
眼の乾くまで残照の薄紅葉
成田美代
盆花をトーチの型に束ねけり
山口ひろよ
新涼や村に人錆び川の錆び
中山皓雪
秋麗むかし校舎のレストラン
箕輪カオル
空を切る百いな千の赤とんぼ
平野みち代
流れ星山の手線は円を描く
甕 秀麿
こほろぎや積みし漁網の昼の闇
宇都宮敦子
紅だすき手甲脚絆稲を刈る
山本無蓋
黒葡萄平和に翳の及びつつ
田原陽子
やさしさに泪あふるる星月夜
数長藤代
いぼむしり貌を傾げて沖を見る
原田達夫
秋思ふと私の小さきフライパン
笠井敦子
片付けの思はぬ力朝顔に
田部井幸枝
その中のひとりなりけり敬老日
齋藤厚子
寒麦集より
黒潮に突き出す岬銀河濃し
和田紀夫
笑ふこと少なき日なりすいつちよん
齊藤哲子
田に案山子ひとつだになし遠筑波
松林依子
はらわたの好き派嫌い派秋刀魚焼く
堀岡せつこ
掛け声の一団よぎる海桐の実
鎌田光恵
苦も楽も炊き込まれをり今年米
三木千代
敬老日己鞭打つほかはなく
中島芳郎
吊るされて本音吐かさる唐辛子
伍島 繁
父と子の没交渉やをみなへし
江澤弘子
戦争は駄目ぜつたいに駄目鉦叩き
岩本紀子
羽音抄
化野へ木もれ日拾ふ竹の春
石田きよし
鳥渡る遠かがやきを引きずりつ
加藤峰子
こぼれ萩耳の忘れてをらぬ声
坂場章子
気持ちよく寝そびれてをり虫の宿
松林依子
敬老日象形文字のやうな老
濱上こういち
蛇口より内視鏡入るそぞろ寒
来海雅子
異論もて言うて寂しきさんま焼く
齊藤哲子
螇蚸とぶ燦と風力発電機
宇都宮敦子
上げ潮や鼻突き出して鯔の群れ
和田紀夫
開きさうであかぬ抽斗律の風
成田美代
夕菅や女の欠伸みてをりぬ
原田達夫
浮世絵の男女向き合ふ秋灯
髙田令子
明日あるを当然のごと秋刀魚焼く
青木ちづる
実況の洩るる苦瓜絡む窓
平野みち代
悔しさに打つ大樹より露時雨
甕 秀麿
悪人と思へぬポスターそぞろ寒
宮﨑髙根
眉月やビルにとけ込む占師
西村とうじ
新涼や押しても沈まぬ麩をもどす
山内洋光
末枯や農具置き場となる牛舎
澤田美佐子
野辺送る稲田の色の殊更に
中村久一
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved