鴫

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平成29年10月号より
選者近詠
見出し
橋道子
みんみんの佳境五拍子七拍子
羅に真白き襦袢ゆるぎなし
風鈴やなまあたたかき点耳薬
花底の探訪に蟻余念なし
赤松や焦げくさきまで油蟬
広島忌見出しの小さすぎないか
曲者の誤植をさがす昼の虫
図書館に黙ひしめけり秋扇
街川の蛇行の果ての秋没日
語りても語りてもなほ敗戦忌
当月集より

ビル組む鉄柱匂ふ炎天下を来る
中江月鈴子
軽鳧の子の行つたり来たりこそばゆし
山ア靖子
とうすみの交む幅広水草かな
荒井和昭
なにがし家専用の橋濃あぢさゐ
田村園子
海の日や行き止まりなる大通り
田令子
笑つてよ声聞かせてよ螢の夜
加藤峰子
夏蝶の密告めきてわれに寄る
相良牧人
妻の座へほどよくテレビ扇風機
荒木 甫
朱夏に逝く父の従軍記章かな
石田きよし
梅雨晴や空に一羽の鳶を置き
成田美代
黒南風やシュプレヒコール今もまた
山口ひろよ
炎天を抜け青春の夢抜けきれず
中山皓雪
球場に沼風とどく蒲の花
箕輪カオル
見ゆる日の富士この辺り梅雨晴るる
平野みち代
本能寺鎌倉知らぬかたつむり
甕 秀麿
田を掻きまわしつつ鴨の子の育つ
宇都宮敦子
風鈴に風をおまけに貰ひ受く
山本無蓋
思ひ出はひとりぞ良けれ草むしり
田原陽子
七月や最新型の血圧計
数長藤代
羊蹄花の丈より小さく不二のあり
原田達夫
青鷺の孤高の冠羽吹かれをり
笠井敦子
受話機から執事ですがと盆の前
田部井幸枝
さくらんぼ整列といふ美しさ
齋藤厚子

寒麦集より

風鈴の風待つだけの不自由かな
足立良雄
釣舟の水脈万緑の色にかな
鎌田光恵
マイナスイオン二万浴ぶ滝見かな
松林依子
ががんぼの筋力といふ脚運び
坂場章子
浅草のモガ老いたるや夕端居
中島芳郎
着こなしに色の引き算盛夏かな
西村とうじ
居酒屋の路地の卜口箱茄子育つ
山内洋光
どぜう鍋素直に足をのばしけり
遠山みち子
河ひとつ越ゆる上京夏衣
宮ア根
梅雨晴の青の眩しき千枚田
木澤惠司

羽音抄

下闇をどかと抜きたる日の柱
原田達夫
ころころと死を学びをる梅仕事
齋藤厚子
嫌はるる身をばかこちて毛虫急く
山口ひろよ
物差しの違ふあなたと心太
平野みち代
師の忌くる無頼の句にもあはざりき
遠山みち子
氷山の一角冷奴の一角
荒木 甫
大欅腹いつぱいに蟬の声
西村将昭
炎天や石のごとくに漢来る
江澤弘子
冷たくも熱く妻問ふ螢かな
山本無蓋
作品としては未熟の入道雲
濱上こういち
言ひ遺すことの篩や麦の秋
青木ちづる
人生の岐路のごとくにトマト選る
島田喜郎
きりぎしの手足掛りに岩煙草
山本久江
猿たちの落してゆきぬ青胡桃
和田紀夫
草むしり郵便受くる脇の下
三木千代
帰省子のリュックびくとも動かせず
中下澄江
逃げ切りし蟬一段と声高く
田中裕一
白き鳥呑んでそのまま青田波
森 しげる
薫風や見舞ひて服をほめらるる
中村明子
浦島の煙飲み込む夏の海
西嶋久美子


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