Shigi-haikukai
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平成29年6月号より
選者近詠
じい
おん爺
橋道子
野に入りて電車は春の音となる
天平と同じ風吹く梅の里
あをによし大仏餅と花菜漬
吃逆のやうにまたして寒戻る
この嬰に万の遺伝子初桜
白魚飯子の住む街に吾も慣れ
検温の音聞きのがす春の闇
花どきの手術中なるピアノ曲
「おん爺」とよばれ薇綿毛濃し
貧乏に品ありとせば蕗の味噌
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当月集より
新緑の水面を分ける太鼓橋
中江月鈴子
啓蟄の寺領に流る平家琵琶
山ア靖子
あぢさゐの新芽出揃ふ朝かな
荒井和昭
ふるさとの記憶紗掛かる蕗の薹
田村園子
岬まで行くを見送る辛夷咲く
田令子
春の渓ベールの白き流れとも
加藤峰子
蜷の道恋の四つ辻ありにけり
相良牧人
下総のあつけらかんと春の雨
荒木 甫
合格を言ふ満面の日本晴
石田きよし
人波の絶えぬ並木の芽吹きかな
成田美代
官女雛畳に何か落しけり
山口ひろよ
不揃ひな台不揃ひな古雛
中山皓雪
東北の訛こぼるる雪柳
箕輪カオル
産土の泥を嬰子に春祭
平野みち代
春浅し会釈小さく返しけり
甕 秀麿
化野に迷つてをれば亀の鳴く
宇都宮敦子
春眠やこの暁光を知らずとは
山本無蓋
卒業子瞳の中に在る翳り
田原陽子
梅東風や空港近道迷路めく
数長藤代
ひいふうみい花散るがごと蝌蚪孵る
原田達夫
淡雪を車窓にとらへ湯の宿へ
笠井敦子
三人の日取即決花辛夷
田部井幸枝
ふたり居のオンザロックやみどりの夜
齋藤厚子
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寒麦集より
一人ならひとりの歩幅花辛夷
江澤弘子
頂に鳶を浮かせて山笑ふ
和田紀夫
女化
(
おなばけ
)
といふ交差点夕霞
岩本紀子
全方位ぬかりなきやう福は内
木澤惠司
啓蟄の一歩一会といふ気儘
澤田美佐子
ブルーナの絵本の余白亀の鳴く
足立良雄
潮騒に負けじと太き呼子鳥
三木千代
春愁ひレバ刺好きと言へぬ日々
島田喜郎
足軽し背筋を伸ばし花近し
中村明子
上戸なる岳父の記憶鯥五郎
村 卯
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羽音抄
多喜二の海なだめてゐたる春夕焼
江澤弘子
山里を出て行く丸太桃の花
宇都宮敦子
紙ひひなまろび幼なに叱らるる
平野みち代
泣くごとく砂糖溶けゆく春苺
青木ちづる
墨壺に立雛のせて金物屋
箕輪カオル
すかんぽの土手に遠のく母看れば
加藤峰子
春灯電話しかぬる人に文
山口ひろよ
土踏まずちよつと凹む児しやぼん玉
松林依子
河馬の足短き故の春愁
相良牧人
春しぐれ雲の天窓全自動
山本久江
ためらひつ抽斗引くや雛調度
山内洋光
ものの芽や最初はぐーといふ決まり
甕 秀麿
たんぽぽや漁師網継ぐ車座に
鎌田光恵
龍の玉土耳古石までもう一歩
村 卯
発酵の薄れてゆきぬ春の夢
田中涼平
毛細の欅の千枝春さぐる
藤沢秀永
ふり向けば肩に手をおく春の風
藤兼静子
幸せに強弱のあり実万両
柴田歌子
川べりを行つたり来たり受験子か
佐々木秀子
春愁の乗り越す駅の二つほど
塙 貞子
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