鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成28年12月号より
代表近詠
黄落
井上信子
黄落のはじめや太き櫻の木
幹黒し櫻紅葉の朝じめり
鵙が来てやや大荒れといふ予報
朝の鵙それよりのこと急がるる
地境に降る月明り人の声
小春日のあなたはいつも祥月命日
読まず書かず誰も来ぬ日の柚子一つ
選者近詠
その味
橋道子
あをぐろき雲に暮れゆく踊唄
変つたやうな変らぬやうなと生身魂
秋の海死者より遠くなりし人
秋草へ蛍光色のスニーカー
ディオールの小袋に受く紅鬼灯
その味を白と言ふべし新豆腐
悼風間史子さん
花野原唐突に翳なせりけり
当月集より

落葉の中の木の実を拾ふ仁王門
中江月鈴子
最新号病む手にわたす野分晴
山ア靖子
溝蕎麦や師の句碑に向け舵を取る
荒井和昭
萩の風ベッドの窓へ届けかし
田村園子
農場に静かに秋の始まりぬ
田令子
塗碗の汁の透明豊の秋
加藤峰子
バイブルと思ふ一書や秋灯下
相良牧人
梨を剥く子規の頭は横を向く
荒木 甫
種なしの西瓜に申すことのあり
石田きよし
水音を後ろに残し花野行く
成田美代
芭蕉葉に音して気付く昼の雨
山口ひろよ
さやけしや古刹にメモを取る少女
中山皓雪
りんだうや国民休暇村潤む
箕輪カオル
校庭に映画見し夜のちちろ虫
平野みち代
こども版英字新聞終戦忌
甕 秀麿
何時の間に虫の夜半とはなりにけり
田原陽子
紛れなき九月の風の川辺かな
数長藤代
悪事とはさして思はず種盜む
佐藤山人
はち切れさうな芋虫の落し物
原田達夫
喝采のやうに雨くる名残茄子
笠井敦子
くろぐろと匂ふ畑土白露かな
山本無蓋
おもひ思ひや一面の秋桜
田部井幸枝
宿題の仕上げの色の涼しかり
齋藤厚子

寒麦集より

少年の声渋くなり実葛
宮ア根
母郷向く一茶の句碑やいわし雲
藤沢秀永
曼珠沙華新撰組の屯所跡
木澤惠司
酒提げてつるべ落しの男坂
足立良雄
寛永寺の鐘の音近し蓮は実に
森田尚宏
演習の砲音わたる花芒
鎌田光恵
落人のやうなる案山子雨上がる
五十嵐紀子
里言葉満たし土産のいわし漬
三木千代
状差しに首の出でたる秋団扇
青木ちづる
普茶料理松茸飯の小さき椀
西村将昭

羽音抄

尼寺やそばかす美しき杜鵑草
箕輪カオル
コスモスや子牛の付ける雌雄札
和田紀夫
吾が影の明月へ旅立ちたがる
石田きよし
水門にはぐれ鳴く鳥野分あと
藤沢秀永
芋嵐幣の黄ばみをわななかす
加藤峰子
芋煮会長嘆願の味見かな
西村とうじ
密やかな指令のごとく一葉落つ
青木ちづる
代代の手足大きく鮭捌く
田令子
秋茄子を水に浮かせて生者たり
成田美代
速き瀬にくいと倒立黒やんま
松林依子
桔梗の莟や秘密持つ青年
村 卯
むかご飯介護の声音七色に
奥井あき
謀めぐらすやうに葛嵐
木澤惠司
秋澄めりひかうき雲のひとり旅
伍島 繁
密やかに闇と遊べる秋の川
大島節子
露草やふるさと淡くなるばかり
来海雅子
秋暑し無口帰農の男ゐて
遠山みち子
コスモスや傘を突きゆく青帽子
小林喜美枝
秋風のめくりたがるを綴ぢにけり
岩本紀子
蛇穴に吾図書館のドアー押す
鈴木征四


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved