鴫

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平成28年11月号より
代表近詠
月明
井上信子
啼く鳥の午後になりたる芒かな
飛石に月の流るるほどの刻
草の花日向に置けば呼ばれたる
夜長来るなり佛飯の山盛りに
月明りして残されし物の数
草市のかへりの露の重さほど
すたれたる祭の濃ゆく匂ふかな
選者近詠
橋道子
橋にある入口出口赤とんぼ
抱く嬰のそつくりかへる素足かな
炎天を届きし文を読む三度
よく汚し莢隠元の胡麻よごし
マンゴーの種避けて切るそつと切る
たはやすく泣くな八月来りけり
盆波の響くを海の谺とも
当月集より

水音と小石のきしむ花山葵
中江月鈴子
朝の気に至福の手足秋立ちぬ
山ア靖子
たぷたぷと闇の溜まりし螢かな
荒井和昭
軒深き宿オプションの螢狩
田村園子
朝顔の花より早く目覚めけり
田令子
鰯雲掛け算のごと増ゆるかな
加藤峰子
対訳のオバマ原稿広島忌
相良牧人
玉音を国民学校二年生
荒木 甫
朝採りを盛り合はせたる原爆忌
石田きよし
夏雲の夏雲として動かざる
成田美代
黒葡萄ひとつ閉ぢ込められゼリー
山口ひろよ
奉安殿に八月の礼黒き雲
中山皓雪
山晴れて人動き出す墓参
箕輪カオル
日と風と海と大空ヨットの帆
平野みち代
切り岸めく青蘆原の横つ腹
甕 秀麿
朝のコーヒー声まだ濡るる油蝉
田原陽子
五十名の僧粛粛と夏衣
数長藤代
朴訥の数へ唄なり秋刀魚売
佐藤山人
サングラス棒つき飴を舐めてゐる
原田達夫
飛んできてすぐに加はる蝉時雨
笠井敦子
六地蔵暮れて素面の酔芙蓉
山本無蓋
一輪咲きて気高きひまはりの黄
田部井幸枝
墓石まだなくて夏草たくましき
齋藤厚子

寒麦集より

葛の香や径のひらけて日本海
宇都宮敦子
くるみ餅何より好きで泣き虫で
佐々木秀子
川幅をはみ出し崩る大花火
鎌田光恵
今生の線香花火を継ぎ足して
中島芳郎
月下美人咲くや包丁研がさるる
村 卯
柔順になれぬひと日や水を打つ
齊藤哲子
神域の煮つまるやうな蝉時雨
江澤弘子
新涼や不整脈とふリズムあり
木澤惠司
SMAPの曲もありけり盆踊
和田紀夫
錠剤に増減ありて残暑かな
来海雅子

羽音抄

本棚の空菓子箱の横に秋
齋藤厚子
常無しの世を惜しみなく凌霄花
山口ひろよ
弟に敬語交へつ盆の文
相良牧人
白桃の重たく沈むたなごころ
坂場章子
ピーマンにはらわたの無き歪みかな
加藤峰子
斑猫の安寿が塚を訪ひがてに
荒木 甫
息荒くスポーツジムの端居かな
足立良雄
「貴重品は螢袋へ」高原亭
甕 秀麿
橋上の流れの止まる大花火
中山皓雪
校章の薄れ案山子の体操着
平野みち代
境遇の似て話し込むつくつくし
齊藤哲子
夕顔の実半分尻を貰ひけり
箕輪カオル
ひよいひよいと人除けてゆく草の絮
原田達夫
遠花火しばし鴨居に手を預け
田部井幸枝
手花火の末尾の五秒無口なり
西村とうじ
鉢巻の案山子一所懸命に
青木ちづる
赤とんぼ竿につんつん牽制中
伍島 繁
無給でも主婦の楽しや胡瓜揉む
安井和恵
曝書してハウツーものの付箋剥ぐ
石山博志
病院の朝がゆ白き原爆忌
佐藤晶子


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