鴫

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平成28年8月号より
代表近詠
草茂る
井上信子
今年また螢見の人見送りぬ
足弱くなりて太宰の忌を迎ふ
草茂る遅筆を人の故にして
見舞状なれば窓辺にさくらんぼ
やや昔汽笛流れし青葉雨
擬宝珠の花茎の数愼しみぬ
草茂る空かぬ扉と空けぬ戸と
選者近詠
知覧新茶
橋道子
メドゥーサの髪解くやうに根分せり
浅蜊めし米屋畳屋向かひあふ
青鷺の水面うかがふ首の丈
子燕に口の大小すでにあり
寄せものに沈めて赤きさくらんぼ
先読むを今も苦手に金葎
叔父を恋ふ知覧新茶をふふむとき
当月集より

垣溢れ出るあじさいの幼き彩
中江月鈴子
黒服にはじまる五月雲あらず
山ア靖子
人を呑むやうな色なるアマリリス
荒井和昭
青饅や明日のために睡るなり
風間史子
当然のやうに巣燕糞落す
田村園子
鉄橋を潜る林道夏立てり
田令子
あらせいとう遺跡ガイドは元上司
加藤峰子
山藤や腰引け渡るかづら橋
相良牧人
はつたいに噎せて口惜し誕生日
荒木 甫
五月鯉折り目に風をはらみけり
石田きよし
噴水や影の寄り添ふ乳母車
成田美代
鼓唄磴の上より花の門
山口ひろよ
俯瞰する雨の植田を病む夫と
中山皓雪
ゆりの木の花を咲かせて資料館
箕輪カオル
拗ね者のごと筍の曲がりやう
平野みち代
一つくらい合同あらむしやぼん玉
甕 秀麿
聖五月紙で切りたる薬指
田原陽子
まつ白な雑布刺しぬ昭和の日
数長藤代
横綱のまだ決まらない兜虫
佐藤山人
火の國の大地を新樹支へをり
原田達夫
登りきて薫風に身を任せたり
笠井敦子
朽ち舟を貫きにけり黄の菖蒲
山本無蓋
山帽子二百四十分待ちの文字
田部井幸枝
鷺草の窓辺に置かれ無人駅
齋藤厚子

寒麦集より

武士道を武者人形に説きにけり
濱上こういち
朝涼や貨物列車に競走馬
宮ア根
花過ぎの納屋に軍手の干されあり
柴田歌子
父と子の同じ向きなり鯉幟
三木千代
慇懃にさるる検問若葉冷え
坂場章子
利根川を縁取りてゐし柳かな
森田尚宏
鶯のまつすぐに鳴く我に鳴く
宇都宮敦子
宇宙人の利権争ひはたた神
木澤惠司
マヌカンのうなじ伸びやか五月来る
藤沢秀永
麦秋の開くに重き大辞典
田中涼平

羽音抄

とほしろき沖のいろ持つ浜豌豆
江澤弘子
山藤の一山の鬱吐くごとく
甕 秀麿
風音を波音と聴く夕端居
中山皓雪
田水引く水音を空に溢しては
山本久江
兵刃を帯ぶごと海女の腰のもの
山□ひろよ
介護士に見守られつつ菖蒲の湯
山本無蓋
呼び合へりをみな等の名を薔薇の名を
荒木 甫
瓜実と成りし円顔ソーダ水
藤沢秀永
母の日の延長線上ゆでたまご
齋藤厚子
ギヤマンに嫌嫌ひらく水中花
青木ちづる
内弟子のやうに離れぬ今朝の蠅
濱上こういち
焼栄螺今生の水放ちけり
三木千代
手に天道虫ガリバーの心地して
村上禮三
太縞の夏シャツ買ふをためらはず
鎌田光恵
藤棚に夕日入り込む隙間かな
伍島 繁
誰よりも風を友とす揚羽蝶
大島節子
イヤホンを分け合うてをりサクランボ
堀岡せつこ
新緑や善意はもっと淡き色
橋信一
剪定の向かうに深き三次元
田中裕一
板に乗せおからは無料柿若葉
小宮智子


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