バックナンバー（鴫誌より）
平成27年10月号より
代表近詠
寒麦集より
羽音抄
夜の秋
井上信子
秋近し波郷全集積む辺り
夜の秋明日も静かに在らむかな
音立てて瓦の傷む秋日和
瓦屋が来てより秋のすすむらし
いつ消えゐしかお隣りの鶏頭花
秋夕焼南まはりに来たりけり
桐一葉学生寮の多き町
選者近詠
夜の秋明日も静かに在らむかな
音立てて瓦の傷む秋日和
瓦屋が来てより秋のすすむらし
いつ消えゐしかお隣りの鶏頭花
秋夕焼南まはりに来たりけり
桐一葉学生寮の多き町
十着
髙橋道子
柿青むにぎやかな人去りてより
空蝉のまだ闘つてゐるかたち
仏具店街裏に涼しく洋食屋
夏休五十音図を置去りに
十着のうちの一着あつぱつぱ
炎昼の足場を覆ふ網微動
瓜揉むやいつか来た道恐れつつ
当月集より空蝉のまだ闘つてゐるかたち
仏具店街裏に涼しく洋食屋
夏休五十音図を置去りに
十着のうちの一着あつぱつぱ
炎昼の足場を覆ふ網微動
瓜揉むやいつか来た道恐れつつ
混迷のギリシヤ経済厄日過ぐ
中江月鈴子
向かう半年くぐる茅の輪の一歩より
山﨑靖子
鋸に生木の木屑梅雨晴間
荒井和昭
夜半の夏たとへばこんな童歌
風間史子
遮断機の音に咲き継ぐ立葵
田村園子
水無月の氷を満たすハイボール
髙田令子
風誘ふだんご三文字の夏のれん
加藤峰子
肥後に生れ江戸に育ちし花菖蒲
相良牧人
黒揚羽恋をひとつに墜ちにけり
荒木 甫
烏賊焼の秘伝のたれといふを食む
石田きよし
暫くを名のなき滝の水しぶき
成田美代
桜の実かたち黒々沁む舗道
山口ひろよ
転ぶなと言はれて転ぶ梅雨の月
中山皓雪
夏萩の花のほろほろ武家屋敷
箕輪カオル
糠床を返して沁みる薔薇の風
田原陽子
終着駅正面城の夏木立
数長藤代
師の句碑を海風研ぎて梅雨明くる
椿 和枝
梅雨明の猫が土竜を咥へ来し
佐藤山人
広告は似たり寄つたり缶ビール
原田達夫
ふるさとに繋つてゐる夜の蛙
笠井敦子
河童忌や術後の妻のみだれ髪
山本無蓋
木漏れ日と青葉の泳ぐ露天風呂
田部井幸枝
鰻焼くけむり遠慮会釈せず
齋藤厚子
寒麦集より
犬掻きや見えつ隠れつ向ふ岸
中島芳郎
一輪の花あれば良し涼しかり
来海雅子
揚花火終へし川面の深眠り
江澤弘子
まくなぎの動きに意志のあるやうな
和田紀夫
風鈴の巧みに舌を使ひたる
甕 秀麿
牛鳴きて棚田の里の李かな
鎌田光恵
とぐろ巻く青大将の休肝日
足立良雄
雑魚捕りし少年の日よ草いきれ
藤沢秀永
帰心ふと南部風鈴なりやまず
天野正子
有線のよく響く日や海開き
宇都宮敦子
羽音抄
歪みても翳ありありと底清水
原田達夫
考へも一緒にゆれるハンモック
遠山みち子
落石の元は羚羊雲の峰
甕 秀麿
初蝉や朝刊を閉ぢ眼とぢ
足立良雄
蒼天のパイプオルガン今年竹
宇都宮敦子
川蜻蛉影が水中飛んでゐる
村髙 卯
雷鳴に庖丁もつてゐたりけり
箕輪カオル
喃語めく雪渓よりの水一縷
成田美代
白玉や戦後と同じ歳生きて
山本無蓋
梅雨寒や実験室めく厨夫
山口ひろよ
病室にハンカチ洗ひ明日手術
青木ちづる
冷し酒ほんとのやうな戯れ話
齊藤哲子
更衣どほりにゆかぬ心かな
濱上こういち
夏の河蕩蕩として空と合ふ
青山正生
リフティングの百や二百や夏の空
安井和恵
青柿の地蔵顔して転げ居る
澤田美佐子
玉葱の高値にレシピ変へにけり
中村明子
しづかなる時経てとどく蓮の風
村上すみ子
雨雲を抱へて沈む夏の空
伍島 繁
水筒のかちわり貰ふ盲導犬
小林喜美枝
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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