鴫

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平成27年8月号より
代表近詠
若葉風
井上信子
若葉風最晩年をよぎりたる
葉桜や息災とのみ聞きゐしが
去りたれば声よみがへる青葉風
ががんぼの幾夜か経たる息をせる
待つことの専らなりけり蜘蛛に息
揚羽蝶昏々と土睡らする
息災と聞く紫陽花の夕べかな
選者近詠
着信
橋道子
伐りし木をしばらく寝かす夕薄暑
この黄こそ波郷の詠みし金雀枝か
うさぎ波子もその嫁も裸足好き
海の駅の他がらんどう浜五月
浜風や粘り出るまで鯵たたく
着信を風鈴の音に設定す
悼小林正史さん
ぬくかりし津田沼までの語らひも
当月集より

終戦詔書聞きし記憶を新にす
中江月鈴子
ゆく春の海へ誘ふ平家琵琶
山ア靖子
チューリップ風の重さに崩れけり
荒井和昭
笑ふにも泣くにも青田風清し
風間史子
巣燕を当てに立ち寄る画材店
田村園子
若葉風婚礼の列進みゆく
田令子
飽くるまで子に付き合ひぬ蟻の列
加藤峰子
骨董の昭和を売つて昼寝かな
相良牧人
掃除機は埃を吸うて昭和の日
荒木 甫
行く雲の速し憲法記念の日
石田きよし
ぢぢばばや辿る木洩れ日濃きところ
成田美代
鳥風や大佐渡小佐渡潮まかせ
山口ひろよ
ゆるやかに日暮きてをり釣鐘草
中山皓雪
柏槙の老木支ふ牡丹寺
箕輪カオル
花菖蒲藍の深さに溺れをり
田原陽子
家中の窓開け五月来たりけり
数長藤代
植田みなひかりと微風従へり
椿 和枝
鳴く格好しても唖蝉やはり唖
佐藤山人
暗がりにリラの匂ひを探りけり
原田達夫
風薫る回す轆轤のにぶい音
笠井敦子
老鴬の全きこゑの渓こだま
山本無蓋
初夏の出店賑はふ遊水池
田部井幸枝
春眠のくねりくねりと寄り道す
齋藤厚子

寒麦集より

海光を羽裏にためて黒揚羽
宇都宮敦子
田を植ゑて畦に小さく神奉る
平野みち代
万緑を串刺しにせり新幹線
甕 秀麿
老鴬やひたすら待ちて手打蕎麦
来海雅子
ゆるやかな約束交はす夕薄暑
松林依子
葉桜や先づ跋ひらく新刊書
藤沢秀永
猫の爪我の爪切り春深む
齊藤哲子
目秤といふ筍を買ひにけり
澤田美佐子
墓一つ残して麦の刈られけり
中島芳郎
終戦の総理の椅子や夏に入る
村 卯

羽音抄

日照雨きてあをの始まる植田かな
平野みち代
夏燕宙の角より曲り来る
齋藤厚子
泉汲む獣のやうに腰を折り
成田美代
人使ひ荒き嬰かな鯉のぼり
甕 秀麿
吹つ切れてからの早足柿若葉
山内洋光
禁色の刺のかんむり矢車草
坂場章子
更衣して老骨を顕にす
佐藤山人
はつなつの少年よそふ飯真白
山本久江
女三代おほどかに伊勢詣
宇都宮敦子
木洩れ日にわづかな湿り浦島草
箕輪カオル
苗積むは祖父の手仕事風薫る
藤沢秀永
陽炎へる島ふところの赤鳥居
鎌田光恵
雉鳩の呼びしか峡に白雨来て
奥井あき
みんなみにみな尻向けて草むしる
原田達夫
松の花ときに道化とならんとす
齊藤哲子
韮畑の続く青さや日本海
遠山みち子
杜を出て黒き揚羽となりゆけり
森田尚宏
春の闇消せしテレビに己が顔
三木千代
崩れんがために全き絮たんぽぽ
島田喜郎
猫の恋父とろとろと椅子の中
田中裕一


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