鴫

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平成27年4月号より
代表近詠
濤音
井上信子
春めくや久しく濤の音聞かず
石段の迫りて急に實朝忌
三月菜遠く眺めて引返へす
人去りて椿大樹の照りまさる
春日や坂の一軒長き留守
留守の家に留守のこゑする春の暮
師も我もただ若かりし春の雪
選者近詠
四阿
橋道子
太箸や見届けられぬものばかり
つつしみて受く縄跳の子の御慶
大根煮て心澄ませてゐるところ
四阿に声のくぐもる寒四郎
新しきいつもの暮し小豆粥
「冬籠届」を出せるものならば
愛さるるごとくマフラー二重巻き
当月集より

行き先云はず安房白浜の花摘みに
中江月鈴子
熱燗やしづかに老いとにらめつこ
山ア靖子
一月の指笛えいさあ我も入る
荒井和昭
書かざれば貧し山茶花咲けばなほ
風間史子
雪吊の傘の内なる抹茶席
田村園子
枝先に御降りの雪残りけり
田令子
杖の手を大樹に当てて初詣
加藤峰子
年賀状羊百態睡くなる
相良牧人
ダウンジャケット貨車四十輌遠ざかる
荒木 甫
師の賀状切れのよき句を目差せとぞ
石田きよし
旭光を纏ふ新雪踏み出せず
成田美代
怖づおづと用なき電話雪もよひ
山口ひろよ
炉話の中心となる煙管かな
中山皓雪
大寒の手に包みたるティーカップ
箕輪カオル
若水を豊かに掬ひ存へむ
田原陽子
川の気のとどく碑淑気満つ
数長藤代
初春のまろき月出てはやひとり
折橋綾子
わが冷えし手の央ほのと温みもつ
椿 和枝
初富士や意外とぬくき牛の角
佐藤山人
物語あり一尺幅の置炬燵
原田達夫
悴みて他人の声になつてをり
笠井敦子
本年はよんどころなく寝正月
山本無蓋
初ひかり分厚き雲の錦為す
田部井幸枝
クリスマスツリーの素朴見当たらず
齋藤厚子

寒麦集より

億劫な場所のストーブ出しにけり
森田尚宏
揺るぎなくいつもの窓に初日出づ
中島芳郎
産土の雪漕ぐ父の歩幅かな
山本久江
食積のひとつは郷のひたし豆
山内洋光
角生えてゐるやも知れず初鏡
宇都宮敦子
別腹にゆとりありさう女正月
足立良雄
氏神に祈願の子らのちやんちやんこ
堀岡せつこ
書き癖の似てはらからの年賀状
坂場章子
その枝が好きか寒禽日毎来る
岩本紀子
たこ焼の味を教はる小正月
田中涼平

羽音抄

冬の川黙てふ力もて下る
甕 秀麿
清貧に彩ありとせば冬青草
江澤弘子
故郷や準ふるさとも雪時雨
来海雅子
生くる謎沼の底ひに枯蓮
石田きよし
初春の嬰はまるごと輝きぬ
奥井あき
つぎつぎに風育てゐし冬柏
森田尚宏
鰤半身割いてはらから揃ひけり
荒木 甫
寒晴や匙に刮げしやうな富士
坂場章子
酒過ぎて牡蠣鍋奉行の任解かる
村 卯
滝凍てて鼓膜の奥も凍てにけり
藤沢秀永
知足とは七草粥の白さかな
濱上こういち
味噌樽の箍いかめしき寒の入
佐藤山人
ビルー棟鏡となりぬ寒夕焼
松林依子
茎清を酒のさかなに蕪村の忌
中島芳郎
蛍雪やルーペの中の鬱のぞく
中山皓雪
寒晴の逃げ遅れたる小さき雲
西村将昭
相好を崩す父なし小豆粥 
五十嵐紀子
飾らるる羽子板空の恋しからん
大島節子
初春を迎ふるミイラ五千回
木澤惠司
一月の風を流して隅田川
太田英子


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