鴫

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平成27年3月号より
代表近詠
冬霞
井上信子
冬霞便りなければ便りせり
極寒の訃報を深く諾へり
音聲の一瞬裸木に朝日
桑枯るる一本道の日差しなり
風濤の便りのごとく梅蕾む
向き直りまた向き直り春の禽
汲み置きの重くなりたる春一番
選者近詠
行間
橋道子
枯木山あさぎの空を網版に
渋さうな雨の浸みゐる落葉かな
抱く嬰にマスク取られてしまひけり
灯を青く接骨院のクリスマス
忖度の過ぎて会へざりツリーの灯
低く座し残党めける忘年会
行間に真実置かれ古日記
当月集より

消防車来てどんど焼き始まれり
中江月鈴子
目覚め赤々冬将軍のお通りか
山ア靖子
近くよりとほくを覗く十二月
荒井和昭
燗熱うして顛末をあいまいに
風間史子
瞬きを増やすマスクに馴染むまで
田村園子
林床を満たしてをりぬ冬の雨
田令子
少年の夢は手にあり龍の玉
加藤峰子
ボジョレーヌーヴォー先づはラベルを楽しめり
相良牧人
いきいきと色をいまはの冬紅葉
荒木 甫
寒林の取り戻したるしじまかな
石田きよし
枯葦の風に潜める恋歌とも
成田美代
駅出でて殿探す酉の市
山口ひろよ
ウイスキー売場気になる十二月
田原陽子
潰されし実より初成り実千両
数長藤代
麦の芽にゆたかなる日矢子はあらず
中山皓雪
あれこれと尋常ならず町師走
折橋綾子
沢庵に鬱金の色の深みかな
椿 和枝
甘口のどぶろく諸に腰にくる
佐藤山人
冬苺スカイベリーの一個売り
原田達夫
山茶花の散り敷く家に退院す
笠井敦子
面白くなくても焚火あれば寄る
山本無蓋
音立てて降る銀杏の奥へおくへ
田部井幸枝
インフルエンザの注射後少し若返る
齋藤厚子

寒麦集より

冬うらら他人丼注文す
宮ア根
笹鳴きのはたと止みたる虚空かな
山内洋光
極月の水荒使ひするひと日
齊藤哲子
極月の酒場に文弱たむろして
中島芳郎
雪催ひ出口調査に濃く印す
坂場章子
一羽きて二羽で連れ立つ寒雀
来海雅子
夜廻りの振込め詐欺を言ひにけり
鎌田光恵
馬車道の淡きガス灯霙降る
藤沢秀永
十二月面白くない芝居なり
青山正生
小春路や片手挙げれば停まるバス
甕 秀麿

羽音抄

十二月匣を開けば海の音
宇都宮敦子
自らを鼓舞する嘘をポインセチア
甕 秀磨
冬の川水草は水にさからはず
山本久江
熨斗紙のやう藪巻に花結
箕輪カオル
自転車の前後に子供籠に葱
山本無蓋
ぐうたらの猫のごと餅搗上ぐる
平野みち代
一枝落つ雪の風紋乱しつつ
成田美代
鯨待つ眼を広角に伏角に
山口ひろよ
背広には隠しポケット~の旅
宮ア根
岸壁に艫のこすれる冬の音
鎌田光恵
日向ぼこわが身太陽電池かな
相良牧人
極月の遠く瞬くものの増ゆ
三木千代
目薬の名のむつかしく着ぶくれり
田中涼平
岩肌の片理節理や川もみぢ
村 卯
柔らかき手ざはりの布冬に入る
藤兼静子
雨あがる気配に映えて実千両
森田尚宏
セーターを編む晩年の色を編む
大島節子
餅をつく湯気をちぎつて渡さるる
鈴木征四
古暦最後見ぬまま外さるる
伍島 繁
老妻の化粧長引く冬隣
谷囗以佐雄


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