鴫

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平成27年2月号より
代表近詠
冬帽子
井上信子
一月の雲密々と移りをり
初鶏の絶えて久しき農の家
箸紙に書きてつくづく我が名なり
米を研ぐ七日の顔となつてをり
玄関のしんしんとあり冬帽子
冬帽は飛ばぬものにて柔らかし
寒菊に欠けたるものの無かりけり
選者近詠
空似
橋道子
数珠子とる十進法の指をもて
ふむふむと啄まれゐる木守柿
紙買ひし重さに釣瓶落しかな
ゴブラン織ほどかれつつや紅葉散る
傾ぎたる松を大事の冬構
返り花声にも空似ありにけり
背らより一人となりぬ冬の駅
当月集より

透析の疲れの残る大晦日
中江月鈴子
小春日の無二の浦風享けながら
山ア靖子
時雨傘開くに庇借り申す
荒井和昭
銀杏を拾ふ父郷の温もりの
風間史子
人の寄る鉢へ人寄る菊花展
田村園子
鼬鳴く醤油工場跡地より
小林正史
冬紅葉神の名を持つつ坂の先
田令子
新豆腐分けて食べれば家族めく
加藤峰子
一円玉噛みてこま犬黄落期
相良牧人
冬日差す眼窩深沈墓守像
荒木 甫
初雪の峰に山気の緊りけり
石田きよし
もとは海あそこは川やゐのこづち
成田美代
秋借む和服すらりとコンシェルジュ
山口ひろよ
晩秋の改札口に信じ待つ
田原陽子
桜紅葉奉納舞へ散りかかる
数長藤代
色無き風色なき余生楡大樹
中山皓雪
心憂く雨に始まる神無月
折橋綾子
神無月暦の予定つつましき
椿 和枝
一団の訛りに眩む時雨駅
佐藤山人
括られて括られなくて菊日和
原田達夫
俎の鯉となる日や小鳥来る
笠井敦子
見守られ花野ヘー歩一歩かな
山本無蓋
バイキング大根下しの銀の山
田部井幸枝
穫れ過ぎの人参捨ててある川辺
齋藤厚子

寒麦集より

窯小屋に薪高く積み冬に入る
齊藤哲子
ブロンズ像胸乳に冬の光かな
宇都宮敦子
神の留守遠回りして帰る
濱上こういち
ハーレーの立冬宣するごとく噴く
甕 秀麿
国家に予算あり秋刀魚買ひに来し
足立良雄
山々の晴れて名残りの冬紅葉
森田尚宏
ほつほつと畝に茶の花咲く日和
堀岡せつこ
切通し抜けて潮の香源義忌
田中涼平
赤のまま跼めば父母の話しごゑ
平野みち代
凍雲や詐欺師等母は居りますか
澤田美佐子

羽音抄

初鴨の嗽ぐのみ神の池
相良牧人
どんぐりやうしろの正面裁判所
山本久江
風呂敷を解くがごとき小春なり
平野みち代
堰止めて膨るる水に葱洗ふ
奥井あき
掛大根太平洋の乱反射
宮ア根
マフラーや夜勤の妻の朝帰り
山本無蓋
天高し長滑り台長いきやあ
島田喜郎
鵯の突切つて啼く弐番街
荒木 甫
引出しは私語のたまり場今朝の冬
江澤弘子
蹼のてんやわんやを見せぬ鴨 
石田きよし
茶の花や余談といひつ詳細に
成田美代
藁塚に日ざし積まれてゐたりけり
箕輪カオル
ためらひつ薬喰とて途中下車
藤沢秀永
純真な幼に風邪を移さるる
安井和恵
セーターに児の貌隠れ逆上がり
青木ちづる
冬耕の田は細波の海のごと
西村将昭
秋夕焼掻き分け満員電車来ぬ
村 卯
散々に降り龍められて石蕗の花
和田紀夫
きはやかに光さす窓白秋忌
森 聖子
吊されて伸びる三角鮭の貌
佐藤みのる


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