鴫

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平成26年11月号より
代表近詠
家路
井上信子
菊の束貰ふ家路といふ言葉
くすり湯を焚く十一月の佛ごと
咲き頃の散り頃の紅さざん花
遠来の風の中なる一葉忌
旅仕度しては解きては竹の春
行秋の雨に出入りを重ねをり
切出しの鞘のゆるさよ冬支度
選者近詠
海底
橋道子
夏潮の緩し残るとは残すとは
師の声のほどの遠さに夜の雷
影円く置きて一樹の夏の果て
海底に波は立たざり敗戦忌
新涼や酢味噌に辛子効かせたる
王朝の恋の色かな野牡丹は
置水に気泡のひとつ秋暑し
当月集より

山肌を霧這ひ昇る風見鶏
中江月鈴子
夏掛けの柄生ひ立ちの川に似る
山ア靖子
草むしりつつ生けるもの手に払ふ
荒井和昭
滝音のひびかふ近道はくねる
風間史子
凌霄花散り継ぐ風のなき真昼
田村園子
草引くや手よりも膝の負けてをり
小林正史
赤松の幹すつきりと盆休み
田令子
かなかなや別るるまでの木のベンチ
加藤峰子
雲の峰七つ釦の掛けちがひ
相良牧人
茹でられて皺のそら豆のこりけり
荒木 甫
国憂ふ妻の語らふ秋暑かな
石田きよし
落蝉や軽く叩きて力石
成田美代
新機種をまう投げ出してをり端居
山口ひろよ
月涼し七回忌とは夢のごと
田原陽子
八月や碑しかと師の筆字
数長藤代
行書・草書と手習ひの娘の夏見舞
中山皓雪
おぼつかなく杖つき歩む今朝の秋
折橋綾子
初秋の師よりの文を賜びにけり
椿 和枝
干梅の四隅に重石して不在
佐藤山人
無頼の気かくしおほして桃かぶる
原田達夫
決心のゆらぐ一件遠花火
笠井敦子
わんぱくの万と集ひし夏の森
山本無蓋
足許へ汗を散らしつこんな坂
田部井幸枝
風強く八月の薔薇紅かりし
齋藤厚子

寒麦集より

古書店の奥行き深し汗拭
齊藤哲子
花嫁のやうに蘭鋳もらひけり
中島芳郎
町筋に色溢れをり宵祭
三木千代
蜻蛉の擽る沼の平らかな
奥井あき
父と見し蝉の脱皮を子と見をり
甕 秀麿
自転車を引きずる坂の油照り
足立良雄
パトロール隊に加はる鬼やんま
箕輪カオル
急行の轟音一瞬野菊晴れ
佐々木秀子
校舎より歌聞え来る墓参り
西村将昭
ゆふぐれや稲穂の風の渡りけり
五十嵐紀子

羽音抄

蝉の穴復路といふはなかりけり
石田きよし
夏料理スペイン色に盛合はす
平野みち代
月光と眼鏡二階に忘れをり
濱上こういち
盆の波網目紋様に引きにけり
鎌田光恵
ビリヤード弾けしごとき水馬
相良牧人
傾けて揺らすことばやアイスティー
奥井あき
ぶつかり来鉄の熱さの金亀子
宇都宮敦子
滑歯筧しやがむで話しかける母
中山皓雪
さうか 君 原爆胎児か 孫 居るか
荒木 甫
映画館出て蹴つまづく星月夜
箕輪カオル
とんばうや露仏に残る口の紅
成田美代
鯖雲のゆつくり動きだす別れ
田令子
三脚を割り込ませけり運動会
宮ア根
原爆忌池の底まで日の沈む
安井和恵
兜虫たたかふための初対面
足立良雄
大夕立雲の墨汁絞り出す
村 卯
炎天に浮かぶ先生のにが笑ひ
藤兼静子
暮れ泥む高層ビルの金魚かな
青木ちづる
和解せる兄弟揃ひ盆用意
宇田川ふさ子
向かひ合ひ心読まれて生ビール
さとう 充


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