鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成26年7月号より
代表近詠
余花
井上信子
葉櫻に雨来て夜闇うすれたる
葉櫻に泌み泌みといふ音の雨
あぢさゐの濃ゆき辺りより日暮れ
飛んで来て夏たんぽぽの背丈かな
夏のたんぽぽ一途に蘭くることをせる
玉繭にありし匂ひの唐突に
繭袋大きかりけり繭市場
西空に生国を置く余花残花
当月集より

梅干し用の梅と言はれて買ひにけり
中江月鈴子
花時の鈴鹿山系右にみて
山ア靖子
コンサートに来ての桜のすごきこと
橋道子
花散らす風の湧きたる癌病棟
荒井和昭
勾玉のかたちに目覚めれば四月
風間史子
火を止めてのち吹きこぼる春の宵
田村園子
手をかざす指のすき間に桐の花
小林正史
雑木林のいつせいに芽吹く赤
田令子
花韮やほつほつ真珠散らすごと
加藤峰子
ゆるぎなき天地の契り蘆の角
相良牧人
たんぽぽのお天道様ヘアッパッパ
荒木 甫
花吹雪見てゐるかほのよろしかり
石田きよし
群れ鳥のなか割り入らむ春スキー
成田美代
遠巻きに淡墨の飛花見届けし
山口ひろよ
サスペンス見過ぎし夜の桜かな
田原陽子
根元より切らる寄生木霾ぐもり
数長藤代
海棠や日蔭の街のなまこ塀
中山皓雪
花の夜や男の子生れしと電話来る
折橋綾子
破損道路開通なりし初燕
椿 和枝
いつの世も何処かでいくさフェーン雲
佐藤山人
ホームランのボール小さく春の月
原田達夫
廃れ窯辺りは桃の花盛り
笠井敦子
覆ひたる雲の隙より春光る
山本無蓋
自らお濠の水の温みけり
田部井幸枝
春一番来てそのほかは誰も来ず
齋藤厚子

寒麦集より

わいわいと一人静をとりかこむ
箕輪カオル
駅中に花見弁当求めたり
和田紀夫
挨拶にひよいと渉りて花筵
森田尚宏
花筵ひとかたまりの国言葉
三木千代
やんごとなき桜見むとて列につく
青山正生
香煙の棚引く境内甘茶仏
山内洋光
春水にうつるさかしま山の影
遠山みち子
蛤の羹囲む喜寿傘寿
藤沢秀永
昨日より歩幅伸ばさむ花薺
田中涼平
沿線に輝き放つ田水かな
齊藤哲子

羽音抄

今といふ暫定点に藤垂るる
成田美代
単品のメニューをひらく花疲れ
藤沢秀永
桜蘂山ほど掃きぬ新教頭
遠山みち子
川波の襞ごとに在り春灯
和田紀夫
一日を十日と思ふさくらかな
相良牧人
夫在らぬねばりなき日の椿餅
中山皓雪
きのふ九分けふひとひらの花の舞ふ
安井和恵
かしこさうな赤門前のさくら餅
石田きよし
悪人の墓をめぐりてあたたかし
足立良雄
浅蜊汁天草の砂とぞ思ふ
平野みち代
藤の花廃線駅の列車宿
岩本紀子
若者に問はれたきことあり四月
松林依子
風の日の自信に満てる鯉幟
村上すみ子
後を追ふかにブランコの揺れつづく
笠井敦子
花冷えや昭和の家具はみな重し
宮ア根
輪になりし園服という花衣
甕 秀麿
若葉雨茶房はとやの釜湯沸く
中下澄江
空の青声に染めたる揚雲雀
西村将昭
風孕む春ジャンパーの怒りめく
青木ちづる
鳥の恋水蹴散らして連れ発ちぬ
田中裕一


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved