鴫

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平成26年5月号より
代表近詠
桑解く
井上信子
桑ほどく頃や夜道のやはらかし
どの道も駅にはじまる雀の子
春の夜の病室にてと言ふ便り
病みながら陽水のこと旅のこと
白椿老いたりと言ひまだと言ひ
椿落つこと夜も昼もなかりけり
よく晴れて朝刊の音椿の音
犀星忌すぐに三鬼の忌なりけり
当月集より

残春の明るさ残る葱畑
中江月鈴子
寒満月あとさき人を置かざりし
山ア靖子
着ぶくれて逃亡者めく検診日
橋道子
二月のめくら暦の解説文
荒井和昭
春隣り使はぬ部屋も灯しけり
風間史子
葱の香と風の折り合ふ川堤
田村園子
橋潜る遊びに興ず都鳥
小林正史
大安の立春電車遅れけり
田令子
薄氷を土に寝かせて音を踏む
加藤峰子
鍋焼と予告されたる空模様
相良牧人
ビルのガラスガラスのビルや寒落暉
荒木 甫
寒月の美しまたひとり逝きにけり
石田きよし
寄生木の青深めては雪山河
成田美代
佐保姫を迎へに真白なる神馬
山口ひろよ
外房の潮風強し目刺買ふ
田原陽子
約束は十日ののちの針供養
数長藤代
青竹の棚鮮らしや春待つ苑
折橋綾子
春手套翠玉白菜・豚角煮
中山皓雪
待春の息をひそめて川流れ
椿 和枝
春立つや脚並そろヘフラミンゴ
佐藤山人
荒れし田の土塊うざうざ凍つるなり
原田達夫
雪のひま縄跳びの縄地をたたく
笠井敦子
リハビリは嘘をつかぬと梅真白
山本無蓋
数へてと呼び掛けてくる梅の花
田部井幸枝
大寒の鏡のまへのT剃刀
齋藤厚子

寒麦集より

この先に隠れ湯のあり探梅行
三木千代
春大雪主治医のいない通院日
中下澄江
切干の日の香もろとも購へり
鎌田光恵
足元に落つるも御歩射弓姶
村 卯
なじみきし介護用靴春隣
村上すみ子
界隈を今も野馬土手草萌ゆる
森田尚宏
笑み給ふ花嫁ご寮梅真白
平野みち代
雪掻きの底ほつこりと一円玉
江澤弘子
水しぶき報道陣まで出初式
甕 秀麿
冬林檎しづかに熟るる誕生日
足立良雄

羽音抄

泥葱を買ひ泥葱として埋む
齋藤厚子
邯鄲の夢のあとさき梅の花
和田紀夫
待春の秒針にあるのぼり坂
田部井幸枝
モーグルの勢ひに倣ひ魚は氷に
山口ひろよ
立春の波頭固きを崩さざる
甕 秀麿
雪を掻く裏日本の少年期
荒木 甫
弁当の届く毛布に包まれて
田令子
無から有とはあかときの春深雪
石田きよし
ゆかしさとして有りあはす春火鉢
箕輪カオル
タップ踏むやうに春泥落としけり
鎌田光恵
覗きゐて四方忘るる干潟かな
五十嵐紀子
影祈りつ斜への畑を耕せり
奥井あき
紙の辞書捨てたる悔いや斑雪
笠井敦子
見上ぐれば翳の色なる春の雪
原田達夫
杖曳けば杖の形に日脚伸ぶ
柴田歌子
埋火の安全神話見破れず
松林依子
寒明けの色鉛筆を削りをり
蒲野哲雄
切干の日毎嵩減る小笊かな
大島節子
言の葉を開くやうなり枝垂れ梅
森 さち子
紅梅の空押すやうに咲きにけり
飯岡敬子


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