鴫

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平成26年2月号より
代表近詠
冬晴
井上信子
越年の街騒にをり歩みをり
一音の流るる如し冬夕焼
大年の円卓につく星明り
息合はせをりしがいつか初鴉
初日いま音に海坂越ゆるなり
一月の白もて並ぶ船館
冬晴の豊葦原の端に居り
教へられ来し数々や睦月尽
当月集より

裸木の夕日まばらな影落す
中江月鈴子
石あれば坐す存分の紅葉渓
山ア靖子
鵯鴫いておにぎり日和詩びより
橋道子
一羽さへこぼさぬ月の楠稚き
中村恭子
郁子垣の二つ熟れたる通学路
荒井和昭
天狼を仰ぐそつなき身拵へ
風間史子
行きずりの種採つて肩すくめ合ふ
田村園子
菊枯れて妻の忌日を忘れけり
小林正史
天幕に冬日差濃し直売所
田令子
茶の花を一輪活けて書斎とす
加藤峰子
便覧をいつも手元に小鳥来る
相良牧人
押印の指に力を十一月
荒木 甫
先競ふやうに落葉松散りにけり
石田きよし
足音の消え満目の谷紅葉
成田美代
自分史を綴りて果てし鉦叩
田原陽子
夫ゐるやうに奉納在まつり
数長藤代
二丁艪の息合ふ手漕ぎ舟澄めり
中山皓雪
秋時雨番鴉か電線に
折橋綾子
冬木立天辺いまだ柿あまた
椿 和枝
熱燗のつまみに上司されてをり
佐藤山人
児と母の飯事あそび新松子
原田達夫
告知すべきか迷ひしかの日冬の鵙
笠井敦子
冬はじめ軒場に乾く旅鞄
山本無蓋

寒麦集より

般若湯なるぞと言ひて十三夜
甕 秀麿
使ひ道不明の道具囲炉裏端
宮ア根
梯子車の試乗の列に秋晴るる
坂場章子
菊花展寺領の風の穢れなし
三木千代
松陰の存ふ街や七五三
藤沢秀永
来歴の句碑に人声神無月
田中涼平
ランナーに従き晩秋の風曲る
奥井あき
冬草を柔かく食む宮古馬
来海雅子
洎夫藍の一所明るき芙美子邸
齊藤哲子
秋扇置いて無口を通しけり
齋藤厚子

羽音抄

鳥渡る空に式典ある如し
三木千代
高野槇一本仕立て冬に入る
相良牧人
落葉して笑まふおさうぢ小僧像
箕輪カオル
冷たくも熱くてもよし新豆腐
山本無蓋
蟷螂の深まなざしの中にをり
成田美代
海鴫りのさだめのやうに海桐の実
山本久江
団栗の五、六個友を悼みをり
宇都宮敦子
秋の雲寝ころぶ堅さありさうな
原田達夫
寒潮に記憶託して虚貝
奥井あき
石蕗黄なり銃後戦後三・一一後
荒木 甫
不似合な夫の軽口燗熱く
山口ひろよ
枯蓮に静かなる意地ありにけり
宮ア根
切札は捨てず使はず日向ぼこ
江澤弘子
軽風をうれしがらせて枯柳
石田きよし
橋渡ればまた橋のある波郷の忌
中島芳郎
石蕗の花母の拘泥そのままに
五十嵐紀子
一人用鍋を買ふ市秋高し
松林依子
柿剥きの絡繰発条と歯車と
村 卯
阿武隈おろし傾ぐ案山子をゆさぶれる
安井和恵
冬帽子深くかぶりて昼の酔
大和活夫


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