鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成25年12月号より
代表近詠
平安の
井上信子
秋草の入り口出□恙なし
蟷螂の居り空いろの砂利を敷く
虫しぐれ窓灯りなき隣家
平安のかたちに粟のこぼれたる
粟一袋いかように置かれても
粟のいろ切なく静か最晩年
神無月ただ太りゆくわが椿
秋尽くる音なく照りて椿の木
当月集より

あいまいな記憶の茸裏返す
中江月鈴子
さばさばと免許返納して葉月
山ア靖子
耳きゆんとトンネルに入る栗弁当
橋道子
安心の抱けばくぼむ今年米
中村恭子
たをやかに影をあやつる秋桜
荒井和昭
かりがねや媼もすなる速歩き
風間史子
穂孕みの草を指揮者のやうに薙ぐ
田村園子
水ばかり小まめに飲んで夏痩す
小林正史
城山に薄日の差せり秋彼岸
田令子
ペダル漕ぐ九月の風は斜めから
加藤峰子
流れ来る「音の風景」ばつたんこ
相良牧人
秋酷暑はがき三行にて不一
荒木 甫
秋蝉の不意に発ちたる手元かな
石田きよし
背を丸く飲む沢水や葛の花
成田美代
いま告げておかねばならぬ星月夜
田原陽子
田男のやうに俯く案山子たち
数長藤代
どの風も手をさしのべる秋桜
中山皓雪
昭和ロマン失せし下町鰯雲
折橋綾子
秋澄むや護国神社へ法燈料
椿 和枝
鍬鎌に生きたる父祖の墓洗ふ
佐藤山人
無花果の押されしままの指の痕
原田達夫
葉裏より風に応へて葛の花
笠井敦子
池巡る熟年夫婦今日の月
山本無蓋

寒麦集より

対岸を襲ふ竜巻稲の波
山本久江
抜くことのくせになりゐて猫じやらし
森田尚宏
クラシック月もひとりで聴いてをり
久米なるを
望の夜潮のにほひの橋渡る
宮ア根
省エネを忘れしままに九月入る
安井和恵
ケーブルのすれちがふ此処とりかぶと
箕輪カオル
つまみたる胴の軟らか青蟷螂
田中涼平
正面も左の面もいぼむしり
齋藤厚子
一位の実女坂への登り急
遠山みち子
分校の生徒十名燕去ぬ
甕 秀麿

羽音抄

鬼灯の寥々と鳴る本調子
山□ひろよ
ありなしの風見ゆるなり秋桜
中島芳郎
秋の浜砂さざなみの寄せて来し
山本無蓋
ゑのころを持たせベンチのおむつ替
平野みち代
鮎落ちて無口の川となりにけり
甕 秀麿
普陀落はこんな香りか葛の花
宇都宮敦子
おしろいはすこしやんちやな花ならむ
相良牧人
カリヨンの一音くるひ天高し
成田美代
桔梗咲く宝石函を開くるやう
村 卯
団栗を拾ふに四足めく構へ
荒木 甫
吊されて楔文字めく唐辛子
飯島風花
海底の声ひきずりて鮭のぼる
中山皓雪
去り際はいつも不器用油蝉
久米なるを
余所はよそ俺家はおらが大根蒔く
佐藤山人
敬老日子へ悪態の受話器置く
足立良雄
稲刈られ日の色浅くなりにけり
原田達夫
風草にかぜの余韻の湛へられ
椿 和枝
背を押す風の軽さや生姜市
青木ちづる
籾の山燃ゆ縄文の夕餉どき
西村将昭
天空をメスで真二つ流れ星
品正敏


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved