鴫

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平成25年9月号より
代表近詠
夏木立
井上信子
ひとり居の鮎を焼きたき夕まぐれ
鮎食べに連れて行かれし県境
八月の内陸線は風の中
短命の父なりし甚平に紐
波郷はも夏の巴里を詠まざりし
八月やみな子を遺しこゑ残し
竹落葉書かず念はず日暮れたる
夏木立朝はささやき合ふばかり
当月集より

風通し良くて向日葵立枯す
中江月鈴子
千年を水音にたたみ樟青葉
山ア靖子
山並の尽くるともなく植田かな
橋道子
蓮ひらく宙両断のモノレール
中村恭子
托卵をうべなふ凰の行々子
荒井和昭
萍の沼一周を軽んずる
風間史子
つば広を一義に選ぶ夏帽子
田村園子
暇さうな花舗の廂の吊忍
小林正史
梅雨人の電車乗り継ぐ都心まで
田令子
尺八を吹くや袷の背を正し
加藤峰子
父の日も変らぬ日課皿洗ふ
相良牧人
且つ且つとタンクローリー梅雨に入る
荒木 甫
とみかうみ夏色の首都眼下にす
石田きよし
雨音の重なりあうて蓮の葉
成田美代
行きずりの桑の実喰むや師の声す
田原陽子
来歴の句碑の風格六月来
数長藤代
存へて夏草に座す夢に座す
中山皓雪
山荘の青葉や小鳥手を去らず
椿 和枝
扶助二人付いて田植機土手攀づる
佐藤山人
補聴器の左右まちがふ鑑真忌
原田達夫
折返す地点となせり合歓の花
笠井敦子
下総の風べうべうと青田かな
山本無蓋

寒麦集より

伊予の海飛魚の駅弁求めけり
藤沢秀永
茶柱を一つ気に呑みて炎天ヘ
中島芳郎
夏風邪や女医に横臥を命ぜらる
村 卯
香を飛ばし音を飛ばして芝刈機
坂場章子
役割に不満少々蟻の列
宮ア根
糸で切る羊羹梅雨の晴間かな
齋藤厚子
朝日差す青田抜けゆく一両車
安井和恵
明易し以後は熟睡といふ脱力
来海雅子
希典の殉死の部屋や若葉光
森田尚宏
六月や髭剃りあとの化粧水
足立良雄

羽音抄

水底のやうなビル街薄暑光
相良牧人
峰動くかに夏雲の迅きかな
森田尚宏
六本木貌して朱夏の昇降機
石田きよし
葉の影のついと剥がれて黒揚羽
宇部宮敦子
蝸牛けふのひと日をこの墓石
荒木 甫
盲導犬「仕事中」とふ札涼し
来海雅子
身勝手な吾の好物冷さうめん
宮ア根
亀の子の手足全開して買はる
佐藤山人
新緑のガラスの街にまよひけり
遠山みち子
波音の通り抜け行く夏座敷
田令子
家族より一輪多く薔薇開く
濱上こういち
仲間内ではソプラノなんです蟇蛙
甕 秀麿
缶蹴れば逸れていよいよ梅雨入りかな
奥井あき
おろおろと喜寿ぴかぴかの水すまし
田部井幸枝
目に青葉食慾不振続きけり
藤兼静子
消防車磨き立てられ五月晴
五十嵐紀子
生きるとは青梅洗ふ手応へに
森 さち子
文庫本落しては読む籐寝椅子
西村将昭
蜘蛛の囲の雨粒膨らみきつてをり
鎌田光恵
きつちりと濤裏たたみ卯浪引く
水野嘉子


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