鴫

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平成25年7月号より
代表近詠
帆柱
井上信子
春愁の置きてゆきたる大鏡
葉ざくらや誕生月の日差すなり
念念を遙かとおもふ竹落葉
夏椿ただ寄り合つて居りにけり
草引くを人に頼みぬ夕すずめ
父の日の匂ひインク壷のにほひ
夕暮れの帆柱に似るビヤグラス
時々は空を仰ぎぬ青葉寒
当月集より

ひとり来て紫陽花寺の門くぐる
中江月鈴子
膨らみてふくらみて落つ春の水
山ア靖子
ほろほろと芥子菜漬の青を噛む
橋道子
裏ごゑで鳴く夜蛙や寄れば止む
中村恭子
たも網を溢れてしとど螢烏賊
荒井和昭
覚えなき声に振り向く宵の春
風間史子
黄蝶発つ百の蕾のひとつより
田村園子
隣席の紬の匂ふ花曇
小林正史
花冷えの眉月映す漆盆
田令子
桐箱の褪せたる紐や花の冷
加藤峰子
家の子と呼ぱれてをりぬ燕の子
相良牧人
ゆぴ差せば面伏せるかに花かたかご
荒木 甫
三階より「日本一」とうららかに
石田きよし
分け入りて囀り風のこゑとして
成田美代
聞こえねど笑つて返すチューリップ
田原陽子
高階の記念写真も花の昼
数長藤代
一本桜生きる限りは逢ひたしと
中山皓雪
歌舞伎座の柿落ぞ花見月
折橋綾子
電子辞書使ひこなせず陽炎へり
椿 和枝
摘まれじと棘が抗ふ芽山椒
佐藤山人
亀鳴くや和独辞典を引く羽目に
原田達夫
夜も昼も花三昧の仏たち
笠井敦子
木登りにほどよき楠の若葉かな
山本無蓋

寒麦集より

角まろき沓脱石や囀れり
山本久江
桜蕊ひとかたまりの浄土かな
江澤弘子
双手もて摘む菜の花に噎せ返る
堀岡せつこ
神苑の箒目あらたしだれ梅
柴田歌子
太陽を背に梨棚の摘果かな
鎌田光恵
指先にほのとぬくみや蓬摘む
森田尚宏
目借時呪文のやうなフランス語
平野みち代
開帳や言はるるままに正座せり
五十嵐紀子
筑波嶺の風すべりゆく花きぶし
箕輪カオル
脚立より跳んで蛙の目借時
山口ひろよ

羽音抄

落人の裔かひと群れ花堅香子
荒木 甫
爪先に宙落ちて来る半仙戯
山口ひろよ
スプリングハズカム妻との英会話
濱上こういち
たんぽぽや多摩の横山遠目にす
青山正生
夕雲雀見上ぐことなき農夫婦
宮ア根
いつしかに忘れしものに春愁ひ
中島芳郎
水の斑の杭にさゆらぎ春深し
奥井あき
蛤の一会の模様焼かれをり
青木ちづる
産声に春月揺れてゐたりけり
江澤弘子
学らんの少年孕む花菜風
山本久江
山襞の折り目の如し山桜
三木千代
乳白に化す黒潮や棚霞
藤沢秀永
囀ると更にさびしき砦跡
村上すみ子
蹠から春のくすぐる汀かな
村 卯
咲ききつて羽目を外せりチューリップ
佐々木秀子
雨の後わらわらわらと蝶の湧く
堀岡せつこ
花時雨パンダも象も独りぼち
中村明子
ふた三こと交し花種蒔きにけり
柴田歌子
耳添ふる楠の大樹や春の水
村上禮三
砂浜を押して乗りたる和布刈舟
鎌田光恵


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