鴫

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平成25年5月号より
代表近詠
満天星
井上信子
北に雨わが満天星の花盛
上野発てふ春愁の一事かな
花散るやわが伝来の井戸蓋に
この町に二つの葬儀さくらの夜
夜さくらや飼犬をまた連れて来て
老犬にみつめられをり春闌くる
さへづりのか細き朝や歩かねば
老松の門前に来て雀の子
伝言を忘れて居りしコート脱ぐ
海遠し山また遠しチューリップ
当月集より

菖蒲田に下りる鉄鎖の弛みかな
中江月鈴子
蝋梅やひとりの時間ふくらます
山ア靖子
寒満月この世が異界かもしれず
橋道子
贄めきて串柿うまし春祭
中村恭子
松根のくすぼる春炉囲みけり
荒井和昭
蛇行してとどこほりなく水温む
風間史子
起き臥しの火吹き竹欲るわが身かな
田村園子
納得はしないが鶯餅うまし
小林正史
薄雲の空に伸びゆく寒の明け
田令子
春ショール風を揺すりて睦むごと
加藤峰子
血を採らることより春の始まりぬ
相良牧人
高階の南北に窓豆を撒く
荒木 甫
語尾伸ばす終着駅に雪しまき
石田きよし
寒晴や木の間にひかる沼の昼
成田美代
カーテンの間仕切りベット水仙花
田原陽子
佛飯へ平和を願ふ春浅し
数長藤代
春遠からじ耳朶のほてりかな
中山皓雪
寒日和背筋伸ばして杖ついて
折橋綾子
叱られし子の握りゐる土筆んぼ
椿 和枝
判子だけ捺してる輩と熱き爛
佐藤山人
音なくて色なくて雪ふりつもる
原田達夫
亡き人のメールに残る寒さかな
笠井敦子
恐竜の骨格見本蝶の昼
山本無蓋

寒麦集より

寒明のまつはるものを解きけり
遠山みち子
雪つりを外す仕事のあつけなし
甕 秀麿
湯たんぽを抱へ文箱のごと運ぶ
坂場章子
禅寺に来てまんさくの花ざかり
箕輪カオル
縁側の寝椅子の母や日脚伸ぶ
柴田歌子
玉椿有無をいはせぬ序章かな
来海雅子
採血針刺し直さるる余寒かな
和田紀夫
曲りたる影もつ杭や凍ゆるむ
田中涼平
寒行の僧へ百旗の翩翻と
奥井あき
縦縞にゆさぶりかけて春立ちぬ
久米なるを

羽音抄

雁風呂や濤声荒き片廊下
山口ひろよ
化石句を口遊みては寒に耐ふ
相良牧人
知恵のやうに切株据る春の雪
宇都宮敦子
人声のふくらんでをり梅日和
成田美代
行く雁のロードマップのあるやうな
笠井敦子
春光や湧水点の鱗もやう
来海雅子
うすごほり透かして見たる近未来
山本無蓋
春靄を進むとすれば背泳ぎに
田令子
生きてきたやうに老いゆく梅真白
松林依子
掘上げし蒟蒻玉に紅い臍
佐藤山人
首根まで泥に汚して番ひ鴨
坂場章子
高齢の町の闇濃し鬼は外
甕 秀麿
くさめしてなにくはぬ顔通りけり
中島芳郎
泪せし映画帰りの牡丹雪
村上すみ子
魚は氷に山手線をダ・カーポ
村高 卯
十一日は月の命日木々芽ぐむ
濱上こういち
人なべて黙劇めくや雪解川
藤沢秀永
黒砂糖一キロ削る雪積む夜
田部井幸枝
常節を好む母ゐて縁広し
遠山みち子
菜の花をみくじのやうに選りにけり
鎌田光恵


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