Shigi-haikukai
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平成25年3月号より
代表近詠
東風
井上信子
日差しいま水の如しや睦月尽
凍橋を渡るみなとみらいといふ街へ
鉄橋は今も鉄橋東風の中
土手草にかくれて一人見ゆるなり
ひよどりの青銅いろに飛びきたる
朝の鵯かの西空をふるさとに
はは二人居りし青饅和えるとき
眞菜といふ美しき名を濯ぎたる
墨いろのわが恋猫も老いにけり
風花を待つとあらねど實朝忌
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当月集より
日が射して寒の雀の細りけり
中江月鈴子
極月の花嫁降りる厳島
山ア靖子
くぢら
さざんかや父は曲尺母鯨尺
橋道子
かしこみし眉間にふるる寒牡丹
中村恭子
船長の付鬚似合ふクリスマス
荒井和昭
温めけり山懐の地酒なら
風間史子
吹かれ来し紙と見紛ふ返り花
田村園子
鴛鴦のことに静かな日なりけり
小林正史
弁当に塩鮭を詰め出動す
田令子
滑翔の迎へる仕種冬の鳶
加藤峰子
枯菊を焚いてこの身をまぶしけり
相良牧人
初氷父の形見の鑿鉋
荒木 甫
黙秘するやうに名の木の枯れにけり
石田きよし
原生林を抜け冬凪の光る海
成田美代
冬深し宅配食を予約すと
田原陽子
熟柿吸ふ母の晩年看ず知らず
数長藤代
原子炉と舎利塔の空白鳥来
中山皓雪
古着屋も幇間塚もしぐれけり
折橋綾子
赤蕪叔母の大層よろこぴぬ
椿 和枝
正月に絞めらるること知らぬ鶏
佐藤山人
枯のなか細く川見え国境
原田達夫
小説の男と遊ぶ置炬燵
笠井敦子
昃れぱ放心の様枯れ芒
山本無蓋
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寒麦集より
干し柿や湖東三山てふ地酒
村 卯
鰤起し客二組の湾廻り
山口ひろよ
空白は多忙の日なり古日記
三木千代
掛声をあげて大根擂りおろす
大場ましら
脈々と川の差し潮葦枯るる
村上すみ子
裸木は日光浴のやうなもの
箕輪カオル
朔風や宙の底まで碧透きて
来海雅子
ことのほか静かな夜の柚子湯かな
和田紀夫
古日記登場人物徐々に減り
濱上こういち
草むらに石蕗咲いてをり二三本
天野正子
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羽音抄
浮寝鳥どこかに白き色を持ち
坂場章子
地下深き書庫に眠る書十二月
宇都宮敦子
煤払ひ殺風景となりにけり
石田きよし
残菊のある日力を抜きにけり
相良牧人
足着かぬ回転木馬十二月
甕 秀麿
源流の氷柱に草根混じりゐて
成田美代
日なたぼこ和気藹藹の見ず知らず
江澤弘子
さづかりしおのれの色の冬の菊
荒木 甫
ピザ宅配大きく傾ぎクリスマス
青木ちづる
十二月八日を言ひて疎まるる
森田尚宏
竪琴のやうな雪吊り奏でたし
平野みち代
手焙りの花鳥の柄をたれも見ず
遠山みち子
針金のハンガーを吊り干菜吊る
山本久江
握り返して手の冷たさを詫びにけり
田部井幸枝
値切られてゐるいたいけなシクラメン
水野嘉子
空つ風叔母は叔父さん残しけり
橋信一
引く度に明日へころがる毛糸玉
笠井敦子
アンケート取らる女性のサンタより
和田紀夫
狐火とさはぎし少女老いにけり
佐藤佐津
白菜の土持ち上げて肩出して
南沢房子
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