鴫

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平成25年2月号より
代表近詠
待春
井上信子
下総と武蔵と隣る冬の川
師のこゑの今のいま欲し霜の夜
綿虫の来ぬ世となりぬ草に風
寒き夜の若者が行きまた月の道
冬ざれの箱積み上げて魚の店
母子寮の灯ともし頃や雪催
枯菊を焚く隣人の暮しかな
冬薔薇おのづから垣越へて来し
水鳥の眠る町なり住み古りぬ
春を待つ幾十たび献杯し乾杯し
当月集より

柚子は黄に予約の酒を選びけり
中江月鈴子
下総に生れて踏れて草の花
山ア靖子
森近む十一月の明るさに
橋道子
鶏頭に禊のごとき山雨かな
中村恭子
師の句碑に隣る落葉の夜泣石
荒井和昭
長き夜の忘るるための覚え書
風間史子
照紅葉ことば貧しく立ち尽す
田村園子
鳶の湧く小春や雄心立て直す
小林正史
登り来て雑木もみぢの九十九坂
田令子
遠ざかる背や冬菊の香を揺らし
加藤峰子
木の実径踵に響く骨密度
相良牧人
歳月を酌みこぼしては秋の夜の
荒木 甫
紅葉かつ散る急がねばならぬこと
石田きよし
隧道を九つ抜けて紅葉山
田原陽子
七十路の化身の化粧ひ文化の日
数長藤代
紅葉かつ散り記憶力かつ減りぬ
中山皓雪
男一人さらひて十月果てにけり
折橋綾子
冬薔薇を活けて硯に向ひけり
椿 和枝
裏山に猿の声するむかご飯
佐藤山人
蟷螂のかほに惑ひのありにけり
原田達夫
去り難き紅葉の宿のアンケート
笠井敦子
冬に入る復元駅の赤煉瓦
山本無蓋

寒麦集より

散り敷きてちさく知らせり花柊
田中涼平
谷紅葉覗く手すりに凭れつつ
成田美代
ちやんちやんこ着て含羞のごときもの
中島芳郎
行く秋や入江に小さき波頭
坂場章子
唐辛子干して人声なき山家
岩本紀子
海風や櫓ひろびろ黄ばみたる
宇都宮敦子
賑やかに恋のみくじや小鳥来る
平野みち代
工房の揺れぬゆり椅子花八つ手
箕輪カオル
冬ざれや岬の宿の甲羅酒
遠山みち子
枇杷の花忘るることも恩寵と
奥井あき

羽音抄

山眠る山を離るるほどにかな
森田尚宏
にぎり飯色なき風の隠し味
石田きよし
悪童にさとされてをり穴まどひ
甕 秀麿
よき音の方へ方へと落葉踏む
箕輪カオル
神無月カーテンコールの死人役
平野みち代
地に画いて道教へらる柿日和
坂場章子
着ぐるみに名刺を貰ふ小六月
相良牧人
冬うらら四たび曲つて元の位置
来海雅子
冬晴や遠く発電所の炎
田令子
ビル街は黄落映すガラス箱
宇都宮敦子
一茶の忌ひつつき虫を脱いでとる
原田達夫
言の葉の遊びに過ぎず実南天
柴田歌子
意のままにならぬ分身大くしやみ
濱上こういち
数珠玉の過ぎてより手に五つ六つ
森 さち子
白埴の節の歌や秋海棠
村 卯
冬帽のけふは険しき母の貌
五十嵐紀子
嫌はれつ好まれつ落つぎんなんは
岩本紀子
古井戸に石敷き詰まる霜のこゑ
齊藤哲子
からびゐて粘力ませり牛膝
大場ましら
秋風に聞えてひるののど自慢
高森 弘


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