バックナンバー（鴫誌より）
平成25年1月号より
代表近詠
寒麦集より
羽音抄
漸寒
井上信子
紅葉散る散り尽したる夜の音
やや寒し木の寄り合つて居るところ
川波のその先々や冬の月
釣竿を寝かせて居りぬ冬帽子
荷を結ぶ雪の便りを聞きながら
千羽とふしまふくろうの行方かな
聞きしことあり梟の女ごゑ
月冴ゆる忌日の多き月なりけり
波郷忌の日のささなみの中に居て
消息の遠くよりくる冬至粥
当月集よりやや寒し木の寄り合つて居るところ
川波のその先々や冬の月
釣竿を寝かせて居りぬ冬帽子
荷を結ぶ雪の便りを聞きながら
千羽とふしまふくろうの行方かな
聞きしことあり梟の女ごゑ
月冴ゆる忌日の多き月なりけり
波郷忌の日のささなみの中に居て
消息の遠くよりくる冬至粥
明日ありて師走の海の没日かな
中江月鈴子
さびさびと喉の奥みせ秋の鯉
山﨑靖子
水音の重奏に揺れ秋ざくら
髙橋道子
立待のおほぞらしぶきゐたりけり
中村恭子
暗がりを出て気後れの竈馬
荒井和昭
色鳥に梢遊子に川の照
風間史子
薄闇に被さる真闇金木犀
田村園子
ねんごろに慈しみつつ桃を剥く
小林正史
十月一日整列に風強し
髙田令子
団栗に目鼻を入れて泣きし児に
加藤峰子
大いなる湖差し渡す稲光
相良牧人
パソコンと仏壇開く金木犀
荒木 甫
爽涼の駅新装の赤れんぐわ
石田きよし
吾れよりも疲れてをりぬ秋扇
田原陽子
いぽむしり不義理ひとつを重ねし日
数長藤代
秋天やドレミファソラシ杭の鳥
中山皓雪
地芝居の貼紙紅殻格子かな
折橋綾子
野紺菊父命日に咲き溢れ
椿 和枝
蟷螂の怒れば怒るほど愉し
佐藤山人
朝霧や熊の爪痕あたらしき
原田達夫
手仕事の消すには惜しい夜長の灯
笠井敦子
はたはたと抜きつ抜かれつ行く野道
山本無蓋
寒麦集より
合言葉あるかに会釈蕎麦の花
成田美代
金秋やつい詰込みし肩鞄
山口ひろよ
観察舎の一枚硝子秋の空
安井和恵
谷津に立ち谷津のにほひの花芒
齋藤厚子
やはらかな力ありけり鳳仙花
大場ましら
久に訪ふ母校なりしやいわし雲
高森 弘
雨風にくづれし風情夕化粧
森田尚宏
先代の使はぬ農具豊の秋
江澤弘子
茶の花の雨に隠れてゐたりけり
箕輪カオル
唐詩読む秋七草に囲まれて
藤沢秀永
羽音抄
烏瓜子ゆゑの憂さに点りゐて
山本無蓋
ぎんやんま胴の真中に草の色
坂場章子
記憶とは創作に似て野の錦
成田美代
銀漢に列なる漁りありにけり
原田達夫
蟷螂の己の貌を知らざりき
荒木 甫
初紅葉五重塔の中知らず
宮﨑髙根
柄に合はぬ溜息つきて新走り
石田きよし
みの虫の蓑へ小さくノックせり
平野みち代
一隅はコスモスに充て山の畑
森田尚宏
神々も口角泡を流星群
甕 秀麿
十畳の真ん中さびし良夜かな
中山皓雪
補助線の引けぬかたちに稲雀
田中涼平
保育器にあくびする嬰星月夜
山口ひろよ
地震跡の断崖に這ふ蔦紅葉
笠井敦子
秋晴れて米の倉庫の重さうに
三木千代
秋ばらの届く晩節誕生日
村上すみ子
噴水のガラス細工を製作中
佐々木秀子
決着をつけて干乾ぶ唐辛子
飯島風花
すすきの子ゑのころの子と滑り来る
久米なるを
駆けて行く丸坊主の子秋祭
堀岡せつこ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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